世にはびこるブラック企業。入ったら最後……中には一生を台無しにする場合もある大変危険な存在である。そんなブラック企業と闘うなんて……そう思う人は少ないだろう。ブラック企業でも辞めると職歴となる。職歴の多い人は採用されにくくなる。だからボロボロになるまで、こき使われて、人間扱いされなくなっても、毎日ブラック企業に通う。

しかし、そんなことで本当に良いのだろうか。ブラック企業に利用され尽くして、捨てられるのを恐れビクビクする毎日を打破するため、ブラック企業と闘うことを決めた人に、その戦い方について、著書『ブラック企業に倍返しだ!』で知られる、弁護士法人アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に”ブラック企業と闘う方法”を伺った。
 

 

1.大手企業もブラック企業だった!

いままでブラック企業といえば、中小企業、社長がワンマンで、社内が体育会的な……というイメージがあったが、岩沙弁護士によれば、「大手で名の通っている企業が、実はブラックだったということはよくある話です。」とのこと。

クリーンなイメージが強い有名企業も、実はブラック企業である場合があるという。過去には「嫌がらせのため、年に何回も、辞めるまで転勤させる。本人も自分に何が起こっているのか理解できておらず、相談に来たときは混乱の真っただ中でした。」との事例もあったとのこと。有名企業でも悪質な退職勧奨が平然と行われていることを知り、震えが来た。
 

2.まずは証拠保全、いきなり丸腰で闘ってはいけない。

岩沙弁護士によると、弁護士に相談に来る段階で、すでに会社と闘っている人がいることが多いという。

「ブラック企業と闘うには、闘う前の証拠集めが非常に重要なんです。長時間労働なら勤務時間の記録、パワハラなら相手の言動が録音されたテープなど。丸腰ではいくら弁護士でも事態を好転させられません。」

自分で闘った後に相談に来ても、すでに会社が証拠隠滅していたり、証拠が本人の証言だけしかないという事例が多い。裁判になっても、裁判所は証拠を基に判断するので、本人の証言だけでは、ブラック企業の実態をなかなか認めてくれない。

ここで気をつけたいのは、裁判所は中立・公正ではあるが、決して、弱者である労働者側に肩入れする存在ではないということだ。証拠不十分の場合は、裁判所も「ブラックではないことを前提とした判決を出すしか無い。特に証拠が残りにくいパワハラは厳しい判決が想定される。」のだそう。

また、裁判所は仮にパワハラの事実を認定しても、慰謝料は雀の涙程度の金額しか認めてくれないケースが多いという。「認定したパワハラに対して、裁判所が低い慰謝料額しか認めないから、パワハラがなくならないんです。もっと高額な慰謝料が認められるようになれば、企業もパワハラをなくす努力をするはずなんです。」と、岩沙弁護士は憤る。