(左から)夢咲ねね、朝夏まなと、一路真輝 (C)エンタメOVO

 1920年代のニューヨークを舞台にした、ハッピーオーラ全開のブロードウェイミュージカル「モダン・ミリー」が朝夏まなと主演で再演される。1967年公開のミュージカル映画を原作とした本作は、心に残る数々のソングナンバーと華やかなダンス、そして愛すべきキャラクターたちによる物語が好評を博し、2022年上演時から大きな話題となった。今回の再演では、引き続きミリー役を朝夏が演じるほか、ミリーの下宿先の女主人、ミセス・ミアーズ役を一路真輝、ミリーの友人のミス・ドロシー・ブラウン役を夢咲ねねが務める。それぞれ宝塚歌劇団在籍時は、トップスター(夢咲はトップ娘役)として活躍。退団後もミュージカルや舞台を中心に精力的に活動を続ける3人に、本作への意気込みや見どころ、お互いへの思いなどを聞いた。


-朝夏さん、一路さんは本作には2022年の公演に引き続きの出演です。22年公演ではどんなことが印象に残っていますか。


朝夏 (本番では)稽古をしているときに考えていた以上に笑い声が起きるシーンが多かったですし、公演を重ねるごとにお客さまが盛り上がっていくのを感じてうれしくなりました。


一路 コロナ禍で声を出してはいけないという空気がなくなり、もう笑っていいんだと、公演中に徐々に変わっていったのかなと思います。


-初演で感じた課題や目標など、今回の再演にあたってブラッシュアップしたいと考えているところは?


朝夏 正直なところ、初演でやりきった感覚があったんですよ。なので、「次はこうする」と考えていたというのはないんですよね。


一路 うん、やりきったね。


朝夏 作品的には再演ではありますが、初演のような気持ちで臨んでいます。


一路 私のお役ミアーズのキャラクターやビジュアルも大きく変わるので、よりそう感じていますね。まあちゃん(朝夏)も初演の時より実年齢が上がっているから(笑)、ミリーの年齢に戻るのも大変な上に最初の出番からテンション高いからキツそう。頑張れ!


朝夏 走り回りますし、タップもありますから、体力的にもハードですね。ただ、公演が1回終わる度に、「あー、楽しかった!」という気持ちで終われる作品なので、気持ち的にはスッキリできます。


-では、今回、ミリーを演じる上での一番のポイントはエネルギーですか。


朝夏 そうですね。若々しさとエネルギーです。


-今回、一路さんが演じるミセス・ミアーズは前回とはビジュアル面から大きく変わっていますが、どのように演じたいですか。


一路 世界で初めてのキャラクターになるので、名を残したいなと思っています(笑)。万が一うまくいけば、今後上演されるときに踏襲される可能性があるので、責任ややりがいを感じつつ、挑みたいと思っています。世界初なんて、怖いです(笑)。それに、先ほどまあちゃんが言ったように、今回は新しく入るキャストの人たちもいらっしゃるし、全然再演という認識ではないんですよ。


-夢咲さんは再演からの参加になりますが、ご出演が決まってどのようなお気持ちですか。


夢咲 私は、1回、初演で作り上げられているものに新しく加わることが本当にプレッシャーで、すごく不安だったんですが、今日お会いして、「新しくみんなで作ろうね」と言ってくださったので、めちゃくちゃ心強かったです。早くお稽古したいです(笑)!


-前回公演や原作映画をご覧になった感想を教えてください。


夢咲 古き良き時代のハッピーなミュージカルだということが感じられて、すごく面白く見させていただきました。最近は、私自身、これほどハッピーなミュージカルに携わることが少なかったので、出演できることがすごく楽しみです。コロナ禍もあったので、きっとお客さまもこうしたハッピーなものを求めていらっしゃるのではないかなと思うのでこの作品に携われることがうれしいです。


-宝塚歌劇団出身という共通点のある三人ですが、三人での共演は今回が初となります。お互いの印象や魅力を教えてください。


朝夏 私たちがこんなにも朗らかでいられるのは一路さんのお人柄があってのことだと思います。大先輩ではありますが、とてもフラットに私たちに接してくださるんですよ。私たちの目線でお話ししてくださる先輩ってすてきですよね。


一路 いやいやいや。まあちゃんは本当に頼りになるので、私はずっと甘えています(笑)。まあちゃんが宝塚を退団して2作目の作品で親子を演じさせていただいたのですが、男役さんだったのにものすごく自然に女性になっていて。女優さんになってから変わっていく姿も横で見させてもらえているので、本当に母になったような気分です(笑)。


夢咲 私は学年が一番下で、元々すごく自由人なのですが、この自由なままでいさせてくださるお二人の優しさ、おおらかさ、全てがうれしいです(笑)。一路さんは大先輩で伝説の方で、ずっと見させていただいてきたので、最初にお会いするときに緊張していたのですが、そのときからすごく優しくしてくださって。今回、ご一緒できるのがすごくうれしいです。まあちゃんとは同い年なのですが、本当に頼りになるお姉ちゃんみたいな存在です(笑)。

-では、田舎町から出てきたミリーがさまざまな出会いを経て大切なものを見つけるというストーリーにちなんで、皆さんの人生を変えるほどの大きな出会いとは?


夢咲 私はやっぱり宝塚だと思います。中学校の修学旅行で初めて見て「ここに入りたい!」って。高校に行きたくなかったんですよ。高校に行くことに全く魅力を感じなくて、このまま無駄な時間を過ごすのかなと思っていたので、宝塚と出合って、頭の中に鐘が鳴り響いたくらい「私は絶対ここに入るんだ!」となりました。あのとき、修学旅行で宝塚を見なかったら存在も知らなかったので、私にとっては大きなターニングポイントでした。


一路 それまでバレエとか歌はやってたの?


夢咲 バレエはやっていましたが、歌はやったことがなかったです。


朝夏 私も一緒です! 自分のことを言っているのかなと思うくらい同じでした(笑)。私の場合は、宝塚の全国ツアー公演を(出身地の)佐賀で見ました。その頃は、バレエはやっていたけれども、モデルも楽しそうだなとか、アナウンサーもいいなと漠然と思い描いていましたが、宝塚を見て「あっ、ここだ!」と思ったんですよ。だから、(夢咲の話と)全く一緒です。


一路 私も同じように宝塚を見て入りたいと思ったので、入団してからの話でいうと…。私は「男役がやりたい」と思って入ったんですが、研究科4年目のときに、当時のトップスターさんの麻実れいさんの退団公演で、相手役として娘役をやらせていただくことになったんですよ。そのまま娘役になってもよかったんですが、麻実さんがお辞めになるときに「男役に戻りなさいよ」と言ってくださって。それが私の大きなターニングです。あのまま娘役になっていたら、今の私はいないと思います。そうしたら、ミュージカル「エリザベート」にも出会ってないですから。退団後の人生もきっと変わっていたと思います。なので、私にとっては麻実れいさんは神のような存在です。


朝夏 すばらしいお話ですね。私は、宝塚を退団するときがターニングポイントでした。何をしようかと考えていたときに、今のマネジャーさんと出会って、事務所に入って、こうしてずっと続けてきています。今年の11月で退団してから8年目になるのですが、やりたいことをかなえてくださる事務所との出合いは大きかったなと思いました。今、こうして表現ができているのは皆さんの力があったからだと思います。全てがつながっているのを感じています。


-改めて公演への意気込みを聞かせてください。


夢咲 痛快でコメディーの面白さにあふれた、ハッピーな作品です。そのときに生まれるライブ感やそこで生まれた波に乗る楽しさをお客さまと共有し、劇場全体が一体化できるすばらしい時間をお届けできたらと思います。この新しいメンバーでまた新しい「モダン・ミリー」が誕生できるよう精いっぱい努めてまいりたいと思います。


一路 まだどうなるのか想像ができていないので、これからのお稽古がとにかく楽しみです。幕が開いたとき、どんなミアーズになっているのかなと、楽しみに待っていただけたらと思っております。


朝夏 ただ笑って、ちょっとキュンとして、ホロっとできる、そんな作品になっていると思います。きっと癒やし効果も抜群です。日常の憂さ?を晴らしに(笑)、劇場にお越しいただければと思います。劇場を笑いで包みたいと思いますので、新「モダン・ミリー」を楽しみにしていてください。


(取材・文・写真/嶋田真己)


 ミュージカル「モダン・ミリー」は、7月10日~28日に都内・シアタークリエほか、大阪、愛知、福岡、東京凱旋公演で上演。