――例えばライブ会場に人が集まったりしても実感は無いですか?
手鞠:うん、数字でも実感がないしお手紙を貰ってもプレゼントを頂いても実感ないですしライブ中に声…例えば僕やメンバーの名前をコールしてくれたりとかもするんですけれども、でも実感がないんですよ。ない、というかなくなった。
どれくらいいるのか、沢山いるのか、ホントにここに僕がいていいのかっていう実感が全然なくて、僕はただそこで立って歌いたいから歌ってるし、伝えたいから歌詞を書くっていうだけの人間で、それだけを一生懸命やってきて。それに対しての見返りみたいなものを求めてないというか、全然信じてないというわけではないですけれども、まぁ実際流動的なものですし、お客さんって。響いてくれる人には響くし響かない人には響かない。
好きなバンドができたらそれに一生懸命通ったらいいと思うし、amber grisのことが好きだったら一生懸命でいてくれれば嬉しいし、それは幸せな事だし、嫌いだと思ったら離れればいいと思うし…極論その時の価値観や利害の一致だと思うんですよ、お互いがお互いに対して。人と人ですから。
だからそういうものだと思ってやってきた中で、単純に、この間MEJIBRAYさんとライブで一緒になるときがあって、MEJIBRAYさんのライブ見て終わった後に、裏でライブが良かったって話をしていた時に「こういうところが素敵だよね、ああいうところが素敵だよね」みたいな話をしていた時に、綴くんがその話の流れの中で「ずっと変わらないで、そうやって頑固でも貫き通す手鞠さんが俺は好きです」って言ってくれた時に、「あー何か実感わいたなぁ」っていうか(笑)。
その日のイベントもすごく良かったしお客さんもamber grisのライブでも盛り上がってくれたと思ったんですけれども、「そういう手鞠さんが好きです」って綴くんが言ってくれた実感のほうが何かその時はジワッときたっていうか。すごくリアルに感じた部分はありますね。…ファンの方々に対してすごく悪い印象に聞こえますけど(笑)。今埋めてほしかった部分を埋めてくれたというか。あんまりライブ中ってリアルじゃないのかもしれないです、僕の中で、お客さんが。
歌詞の世界を歌ってたりとか、そういう部分で頭がいっぱいになっているのでそんなにお客さんのレスポンスっていうのが頭に入らないというか。もしかしたら手鞠という存在以前に僕が潜在的に求めているものがそこではないのかもしれません…。
勿論ライブでお客さんが盛り上がってくれたら嬉しいですけれども。何か違う感覚ではありますね、ホントはボーカルとしてそれがちゃんと見えることが「ヴィジュアル系バンド」のボーカリストとして必要だと思うんです。表現することとお客さんがちゃんと盛り上がってるところも冷静に見えつつ、みたいなところがちゃんとボーカルに…少なくともヴィジュアル系のボーカルにはカリスマ的要素を担う必要なファクターだと思うんですけど僕にはそこがいつからか欠落しちゃってるので…それを養おうっていう気もあんまり本人にないですし(笑)。
そんなにバランスよく僕はできないので、何でもかんでも。でもその分、歌う事に全神経を集中する、V系を愛していながらV系のスタイルじゃない、そんなVoのあり方が認めてもらえたら痛快じゃないですか?(笑)そういう挑戦でもあるんです。
だからそういう人がボーカルになっちゃった時点で本当にもう間口狭めてるんですよ(笑)。それを本人が選んでやってますし、それが自分に合ってると思ってやってる時点でだいぶそこで好き嫌いというか好みがどうしても分かれてしまうので。だからもう「そういう人間もいるんだな」と思ってもらえてればいいかなと。