「親について記憶しているなかで苦しいのは、僕が小さい頃に目の前で喧嘩をしていたふたりの姿で、僕を後ろにかばうようにして、母が父に向かって必死に何かを言っていました。

すごく怖かったから覚えているのだろうと思いますが、そのほかでは残業が続いて晩ごはんがお弁当ばかりになったときに、『こんなものをいつまで食わせる気だ』と母に大声を上げる父の姿です。

そんな父を母は無視することが多くて、父がリビングにいるときは寝室にこもるので、僕もそこで母と遊んでいましたね。

一人っ子なので母を独占できるのはよかったと今は思っていますが、父はいつもとっつきにくい感じで苦手で、会話はできるけど、ふたりで遊んだような記憶はほとんどありません。3人でいても話が弾むようなことは滅多になく、大きくなってからは僕も自分の部屋から出なくなりました。

休日に母はひとりで買い物に行くようになり、そのまま夕方まで戻らないこともよくあって、父は家にいるけど何をしているか知らないし、昼間はひとりでカップラーメンを食べていました。

友達の家族団らんの話なんかを聞くと羨ましいなと思うけど、僕のことも放置し始めた母のことを考えると絶対に叶わないなとわかるし、虚しくなりましたね」