『世界の中心で、愛をさけぶ』(’04)、『パレード』(’10)などの行定勲監督が人気作家・西加奈子の同名小説を映画化した『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』(6月21日公開)が、公開前からマスコミや映画評論家の間で早くも話題に。先ごろ行われた第17回上海国際映画祭でも、世界中の映画メディアから絶賛されたという。
映画は孤独に憧れ、時には大人顔負けの深~いため息までついちゃう小学3年生の風変りなダークヒロイン・琴子=通称“こっこ”の成長物語。こっこを天才子役の芦田愛菜ちゃんが演じているのも話題だが、人気と好評の理由はただ“愛菜ちゃんが可愛いから”ということだけではなさそうだ。
そこで「ウレぴあ総研」では「満足度調査」を急遽実施。6月1日(日)の試写会に来場した観客の方々にアンケートに協力してもらったところ、満足度はなんと70~100点の高得点ばかり。100点と書いた人も結構多くて、満足度の平均は軽~く90点超え! 噂は本当だった。いったい、みんな、映画のどこに心動かされたのだろう? アンケートを参考にしながら、独自に分析してみると……。
最も多く見られたのは「懐かしい」という意見だ。
「懐かしい。分からないことがたくさんあって、好奇心旺盛だった小学生のころの自分を思い出させてくれた」(40代・男性)
「大人になると忘れてしまうようなことを思い出させてくれて、ほっこりできました」(40代・女性)
このように自分のあのころと重ねて「懐かしい」気持ちになった人が多いようだが、本作とこっこが多くの人々を魅了するのは決して「懐かしさ」だけが理由ではないような気がする。ただ郷愁を誘うだけの映画だったら、そんなに観る者の心はざわつかない。
「最後のこっこの成長した姿には私、いや、大人の方が共感して泣いてしまう。子供向けではなく、どの世代にも受け入れられる侮れない作品だと思います」(30代・女性)
そんな意見からも分かるように、これはノスタルジーを味わう映画ではなく、いまを生きる我々に投げかけられた現在進行形の映画。だから、かつてこっこと同じ小学三年生を経験したすべての大人の心に響くのだ。
こっこは自分がカッコいいと思ったら、「カッコいい」とストレートに口にする。自分が嬉しくないと思ったら、「嬉しくない」と素直に言葉にする。自分の心に正直に、分け隔てのない純粋な心だけで物事と対峙していく。
そんな彼女が、目の前に次々に起こる新しい出来事や疑問をジャポニカ学習帳に書き込み、そのひとつひとつと真剣に向き合い、格闘し、自らの答えを導き出そうと姿に観る者はあのころの自分を重ねるに違いない。
いや、重ねるだけでなく、その問題を彼女の気持ちになって我が事のように考え始めている。
こっこになりきった芦田愛菜の迫真の演技がそうさせるのだ。