「今までは優等生っぽいイメージの愛菜ちゃんだったけど、この作品ではイキイキとしていて元気で、活発なところが観られてすごくよかった」(40代・女性)
「愛菜ちゃんの演技がとても自然なのがいい」(30代・女性)
これらのアンケートからも分かるように、本作の愛菜ちゃんはテレビドラマなどで見せてきたこれまでの彼女とは違い、兵庫県出身ならではの歯切れのいい関西弁を炸裂させ、まさに女優としての自然な芝居で観る者の目を釘付けにする。それに圧倒される。
めくるめく多彩な表情、怒りをテーブルに叩きつけてその場を離れるときの絶妙なアクション……その間と動きに嘘がないから思わず見入ってしまう。
とりわけ、優しいおじいちゃん(平幹二朗)や親友のぽっさんから「相手の気持ちを想像してごらん」と言われてからの彼女は凄まじい!
自分の気持ちと想像力とを心の中で上手く消化ではなくて、涙目でご飯をかき込むクライマックスの険しい表情がとにかく圧巻だ。現実と向き合っているその姿がいじらしくて、真に迫っていて、そこには本物の感情が流れている。
そして、そんなこっこを見ていてふと気づくのだ。あのころは、自分もいろいろなことに真剣に向き合い、彼女のように懸命に格闘していたのに、大人になるに連れて、仕事や目先のこと以外の社会や現実についてあまり真剣に考えなくなってしまったということを。
いや、大人になった私たちは、薄々分かっていたのに、気づかないふりをしてきただけなのだ。便利な社会の中で与えられる情報だけを鵜呑みにし、考えることや想像することを放棄し、楽な選択ばかりをするようになってしまった。そんな後ろめたい心を、こっこが「ボケ、まだ間に合う!」と刺激するから、観ている特に大人は焦るし、動揺する。こっこに起こる一大事を知らず知らずのうちに自分の問題として考える中で“このままではマズい”と思うようになるから、大きな共感を得ているのだろう。
家族の素晴らしさ、“イマジン”=相手の気持ちを考えることの大切さ、大人になるに連れて忘れてしまった大切なもの、命の尊さ……いろいろなメッセージが詰まった本作から何を受け取るのかは、映画だから、もちろん観た人に委ねられている。
さあ、あなたは『円卓』を観て何を感じ、どんな想いにかられるだろう?
こっこに「このボケ!」と怒鳴られるようなつまらない大人になりたくなかったら、この映画は観ておいた方がいいかもしれない。