「架空の仕事の物語」が子どもたちの仕事を考えるきっかけに。田丸雅智氏が作品を通して伝えたかったこととは。
株式会社 学研ホールディングス(東京・品川/代表取締役社長:宮原博昭)のグループ会社、株式会社 Gakken(東京・品川/代表取締役社長:南條達也)が発行する『世界のふしぎは、きっと誰かの仕事でできている。』(2024年7月18日発売)収録作品の朗読が、2024年10月13日(日)にラジオで放送されることが決定いたしました。
■「小学生の将来就きたい職業」ランキング、ここ10年の移り変わりが知りたい!
学研教育総合研究所が2023年、小学生1,200人を対象に調査を行った、「小学生の日常生活・学習に関する調査」(「小学生白書Web版」)によると、「小学生が将来就きたい職業ランキング」(性別を問わない、総合)は……、
〇1位 パティシエ(ケーキ屋)
〇2位 YouTuberなどのネット配信者
〇3位 警察官
〇4位 野球・サッカー・水泳以外のスポーツ選手
〇5位 医師・歯科医師
〇5位 看護師
となりました。
前年(2022年)の調査でも、「パティシエ」と「YouTuberなどのネット配信者」はトップ2にランクイン。これらは、今の小学生の就きたい「2大人気職業」と言えるでしょう。
このほか、7位がエンジニア・プログラマー、8位が運転士、歌手・アイドル、10位がプロサッカー選手、保育士・幼稚園教諭というラインナップ。
ちなみに、最新調査の「5年前」の結果はどうだったのでしょう?
2018年の調査結果を振り返ってみると……、
〇1位 パティシエ(ケーキ屋)
〇2位 プロサッカー選手
〇3位 YouTuberなどのネット配信者
〇4位 警察官
〇5位 医師・歯科医師
トップ5のお仕事のラインナップはあまり変わりませんが、2018年には2位にランクインしていた「プロサッカー選手」が、2023年にはトップ5から外れ、10位にまで順位を下げているのは、大きな違いと言えそうです。
むしろ、野球・サッカー・水泳以外の「スポーツ選手」がランクインしているのも、注目ポイントかも?
ただし、いま、メジャーリーグで大谷翔平選手が大活躍しており、子どもたちにもあこがれを与えています。
今後、再び「野球選手」がランクインする日が来るかもしれません。
また、2023年、2018年ともに、小学生の就きたい職業ランキング1位は、どちらも「パティシエ」!
「パティシエ」は時代の変化に耐え、殿堂入りを果たしている仕事と言えそうです。
さて、最新の「小学生の将来就きたい職業ランキング」を振り返ったところで、今回は、小学校中学年~高学年向けに、「ふしぎ」な光景を下支えしている架空のお仕事現場を描いた日常系ファンタジー、『世界のふしぎは、きっと誰かの仕事でできている。』(Gakken)の著者、田丸雅智さんに、この物語と「小学生と仕事」についてお話をうかがいました!
▲『世界のふしぎは、きっと誰かの仕事でできている。』
「すこしふしぎな仕事の現場」を描いた新刊の児童書、『世界のふしぎは、きっと誰かの仕事でできている。』の著者、田丸雅智さんにインタビュー!
――今日は、『世界のふしぎは、きっと誰かの仕事でできている。』(以下、『フシゴト』)の物語と、「仕事」というテーマについてお聞かせください。『フシゴト』は、8つのお話が入った短編集ですが、すべての作品にそれぞれ異なる「ふしぎなお仕事」が登場していますよね。今回、「仕事」というテーマで作品を書かれたのはなぜですか?
田丸雅智(以下、田丸) 架空の仕事、不思議な仕事にまつわる作品はこれまでもいろいろ書いてきたのですが、一冊全体のテーマにしたことはなかったので、書きたいと思っていました。
昨今、AIの台頭もあって「既存の職業がなくなっていく」という話題を目にするなかで、もっと新しい仕事、今はない働き方について考える機会が増えたらとも日頃から思っていました。この本に登場するのはどれも不思議な仕事なのですが、この物語が仕事について楽しみながら考える機会になればいいなと思っています。
――たしかに、本書に登場するのは、「生き物ボイストレーナー」、「デジタルゴミ収集員」など、「実際にはない仕事」ですよね。ただ、それぞれの仕事に就いている大人たちが物語の中で語る「やりがい」や「大変さ」、その仕事を選んだ「きっかけ」は、子どもたちが仕事について考えるヒントになっていると思います。
ということで、今日は、「学研小学生白書」のデータを用意してみました。これが昨今の「小学生が将来就きたい職業ランキング」なのですが、これを見て、何か感じること、お気づきのことなどはありますか?
田丸 やはりYouTuberが目を引きますね。「仕事をしている姿や職業の情報が子どもたちの目に入るか」は重要なんだと思います。かつてはなかった職業で、もっとこういった新しい職業、働き方がランクインしてきたらおもしろい未来になっていくだろうなと思います。
ちなみに、ぼくが名乗っている「ショートショート作家」という職業もデビュー当時はありませんでした。今後、ランクインするまでになったらなと夢想しています。
――「ショートショート」は子どもたちの人気も高くなってきているので、今後新たに「ショートショート作家」という職業がランクインしてくるかもしれないですね。
田丸 もうひとつ、今はない職業をみんなで考えて「架空の職業ランキング」をつくってみるのも、仕事について考えるよい機会になるかもなとも思いました。手はじめに、この本に登場する不思議な職業のランキングをつくってみてはどうでしょうか。(笑)
――さて、ここからは、本書の創作過程についておうかがいしたいと思います。本書には、さまざまな架空の職業が登場し、子どもたちが(一部の作品では大人も)体験する内容になっていますが、この作品に登場する職業は、どのような発想で考えられたのでしょうか?
田丸 まず、日常に当たり前にあるようなものや光景を題材にしたいと思っていました。作品に登場する「世界の裏側」は、架空のものです。でも、読後に、身近なものを見て、「もしかして、これにも何か秘密があるのでは?」と想像が作品を飛び出して、いろいろなことに連鎖していくようにしたかったからです。
たとえば、「青空」は当たり前に身近にあるものですが、じつは「空を青く染めている人がいたらどうだろう」と考えて「空染め職人」という職業を考えました。また、絵画に描かれている人物は、じつは「だれかが演じていたらどうだろう」と考えて「絵画俳優」という職業を考えてみました。ほかにも、既存の職業から考えていったものもあります。「ボイストレーナー」という既存の職業から考えた「生き物ボイストレーナー」というものがそれですね。
▲「空を青く染めている人がいたらどうだろう」という想像から生まれた「空染め職人」
――なるほど! そのようにして生まれたアイデアの「種」を、その後、どのようにして作品に落とし込むのでしょうか?
田丸 今回の作品では、「職業」は最初にまとめて考えて、リストをつくりました。そのとき、「不思議な職業」の仕事内容に加えて、その仕事でのやりがいや大変なこと、仕事人の考え方や哲学が垣間見えるシーンなどについても同時に考えました。
――リストを作成するとき、8つの職業は、あえてバラバラなものにしたんでしょうか? それとも、何らかの「共通する要素」を設けられたんでしょうか?
▼『世界のふしぎは、きっと誰かの仕事でできている。』に登場するお仕事
・空染め職人
・生き物ボイストレーナー
・デジタルゴミ収集員
・影縫い師
・風飼育員
・絵画俳優
・争い消防士
・開花応援団
田丸 各仕事に共通する要素として、「あり得ないものにする」ということを考えました。じつは、「近未来にあるかもしれない」という職業について、雑誌『SFマガジン』での「未来図ショートショート」という連載で書いているのですが、この『フシゴト』では、読者の子どもたちに、「より発想を遠くに飛ばしていただきたい」という願いから、「あり得ないもの」を共通要素にしました。
――8つのお仕事のなかでも、特に思い入れのある「職業」、「場面」、「セリフ」などはありますか?
田丸 どの職業、お話も大切に思っているのですが、強いてあげると、最終話の「開花応援団」でしょうか。こちらは、応援で花を咲かせることができる開花応援団という仕事のお話なのですが、自分自身の仕事観を反映しているところが少なくありません。
――とても意外です……! 「開花応援団」は屋外へ出向いて行って、大きい声と動きで、チームで応援しているので、「ショートショート作家」という、室内で黙々と執筆をするイメージとは、かけ離れているような気がします。ここに田丸さんの仕事観が反映されているという点、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
田丸 たとえば、花を応援するにあたっての心構えを主人公に伝える場面では、応援団の団長が「応援では花の力をいかに引きだせるかが大切」「応援している自分に酔ってはいけない」「応援を一方的に押し付けてはいけない」などのポイントを語っています。
それは、自分自身の活動でも大事にしている点です。というのも、ぼくは執筆活動と並行して10年以上、全国各地でショートショートの書き方講座を開催させてもらっています。年齢で言うと、小1からシニアの方まで。場所も、少年院や企業でも開催しています。その講座では、参加者の方の中に眠る空想を開花させてもらっている感じで、そのときに大切にしているのが、先ほど言ったような考え方です。
それから、開花応援団の団長は、自分が幸せだからこの仕事をつづけているという考えも持っています。ここも、ぼく自身のことをそのまま反映させました。
――なるほど! 「開花応援団」ならぬ「ショートショートの書き方応援団長」なわけですね。
▲「開花応援団」には田丸氏の仕事観が反映されているという。
田丸 ちなみに、本書に収録した職業は8つですが、リストでは10の職業を考えていました。今回登場しなかったのは「遊具発掘人」と「夢脚本家」というもので、また機会があれば作品に仕上げてみたいなと思っています。
――「遊具発掘人」と「夢脚本家」ですか! 名前を聞いただけでも、「どんなお仕事なんだろう」と妄想が膨らみますね。
先ほど、「仕事をしている姿や職業の情報が子どもたちの目に入るか」という話もありましたが、読者の子どもたちは、自分の目に触れない仕事や、職種について、あまりイメージがわかない部分もあるかと思います。今回の作品では、「仕事」に関するどういうことを子どもたちに伝えたいと考えていますか?
田丸 この本でぼくがやりたかったのは、テレビ番組の『情熱大陸』や『プロフェッショナル 仕事の流儀』の「ふしぎな職業」版です。ぼくはこの2つの番組が好きで、いつも観ているのですが、好きな理由のひとつは、その仕事の知らなかった側面を知ることができるおもしろさがあるからです。もうひとつが、「働く」を超えた「生きざま」を垣間見ることができ、熱い気持ちになるからです。
特に後者について、自分が今後その仕事に就く可能性はないと思いますが、生きざまからは大きな刺激をいただいています。その仕事観にふれて、自分自身を振り返るきっかけになったり、自分もがんばらないとなと元気や勇気をもらったりしています。
本書からも、存在しないはずの不思議な仕事のお話なのに、生きざまなどから感じられるものがあって、現実世界でのさまざまな刺激につながっていけばいいなと願っています。
▲存在しない仕事の物語からも「生きざま」に触れることができる。
――さて、まさにテレビ番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』のようなご質問になりますが、田丸さんは、仕事の「やりがい」「楽しさ」とは、どのようなところにあると考えていらっしゃいますか?
田丸 仕事のやりがいや楽しさは、本当に人それぞれだと思います。なので、この本でも一冊を通してひとつの考え方、価値観を押しつけるようにはしたくありませんでした。
その上で、自分自身の仕事のことで言いますと、ぼくはショートショート作家として、「アイデアを思いついたとき」「作品が完成したとき」「読んでくださった方からポジティブな反応をいただけたとき」の3つに幸せを感じます。産みの苦しみは日々ありますが、やっぱりそれが楽しいのでつづけられていますね。
――想像や創作には、「産みの苦しみ」がともなうと思いますが、そこから、もしかすると、「(今は存在しないけど)こんな仕事があったら楽しいな」とか、「こんなサービスがあったら、人気が出るんじゃないか」という発想で、現実に新しい仕事が起業されていくかもしれません。小説のテーマとして、あるいは、それを現実化する出発点として、いろいろな仕事を発想(妄想)するためのヒントを教えていただけますでしょうか。
田丸 空想を通じて現実世界によい影響を及ぼすことができたら、それ以上にうれしいことはありません。直接的にはあり得ない仕事が並んでいますが、間接的に何か伝わるものがあって、未来が素敵なものになればと願っています。
新しい仕事を考えるにあたっては、それが完全に空想のものなのか現実のものなのかで違う部分もあるかとは思うのですが、日常のことによく目を凝らしてみることがヒントになると思います。新しいことを考えるとき、ついつい「ここではないどこか」に目を向けようとしがちなのですが、今この瞬間、自分の周りにもヒントはたくさん転がっているものです。それを逃さずしっかりキャッチするために、日常をよく観察してみることがオススメです。
それから、自分自身が「うれしいな」「幸せだな」と感じることを突き詰めてみることもヒントになると思います。ぼく自身がショートショート作家という仕事にたどりついたのも、自分と向き合い、本当に幸せだと感じることを深く考えていったことがはじまりでした。
――では、読者の子どもたちにメッセージをお願いいたします。
田丸 この本に登場する職業はあり得ないものなのですが、仕事人たちの生きざまなどから何かを感じていただいて、活力にしていってもらえたらうれしいです。また、この本が、今はない仕事について前向きにあれこれ考えるきっかけになればと願っています。
現実世界の話でいえば、ぼく自身もそうでしたが、今はない仕事で生きていこうとすると、きっと多くの反対に合うだろうと思います。もちろん、その中には的を射た声もあるはずで、まったく耳を傾けないのはどうかなとも思うのですが、悪い意味での常識にはとらわれず、どんどん切り拓いていっていただきたいと思います。
――ショートショート作家が「小学生の将来就きたい職業ランキング」にランクインする未来も、きっと近いですね……! 最後に、今後のご予定をお聞かせください。
田丸 まず、小学校低学年向けの児童書『ヘンチンケン あまりにも変な珍種せいぶつ研究所』(Gakken)が、9月に刊行されました。研究所所長のウネリン先生や仲間たちが、珍種せいぶつの「大陸ウシ」や「おそうじカメレオン」に出会っていく物語です。マンガのような「コマ割り」になっていて、オールカラーイラストとともに小説を楽しめるので、本を読みなれていないお子さんでも読みやすいのではと、本を好きになるきっかけになれたらうれしいです。
▲『ヘンチンケン あまりにも変な珍種せいぶつ研究所』
そして、『世界のふしぎは、きっと誰かの仕事でできている。』の3つ目の収録作品、「デジタルゴミ収集員」の朗読が、南海放送ラジオ「ショートショート作家田丸雅智の不思議な世界」で放送されることになりました。「デジタルゴミ収集員」は、プロのミュージシャンを目指す青年、ハヤトが、ひょんなことから、PCやスマホで削除されたデータを「デジタル空間」で収集するバイトをすることになる物語です。
こちらは、2024年10月13日日曜日の17時より放送予定です。ぜひお聴きください。
――本日はどうも、ありがとうございました!
▲ラジオで朗読される「デジタルゴミ収集員」より。
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<南海放送ラジオ>
「ショートショート作家田丸雅智の不思議な世界」
田丸雅智さんの作品を南海放送アナウンサーなどが朗読するラジオ番組です。
*放送:毎月第2日曜日 17時~17時15分
*番組公式サイト:https://www.rnb.co.jp/radio/short-short/
☆「デジタルゴミ収集員」朗読の放送は、
2024年10月13日(日) 17時から!
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[商品概要]
■『世界のふしぎは、きっと誰かの仕事でできている。』
著:田丸雅智
絵:フルカワマモる
定価:1,100円(税込)
発売日:2024年7月18日
判型:四六判/230ページ
ISBN:978-4-05-205990-2
学研出版サイト:https://hon.gakken.jp/book/1020599000
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<電子版>
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■株式会社 Gakken(Gakken Inc.)
https://www.corp-gakken.co.jp/
・代表取締役社長:南條 達也
・法人設立年月日:2009年1月13日(2022年10月1日商号変更)
・資本金:50百万円
・所在住所:〒141-8416 東京都品川区西五反田2丁目11番8号
・事業内容:出版・コンテンツ事業、グローバル事業、医療・看護出版コンテンツ事業、
園・学校・社会人事業、教室関連事業、EC・オンライン事業、広告事業を展開
■株式会社学研ホールディングス(GAKKEN HOLDINGS CO., LTD.)
https://www.gakken.co.jp/
・代表取締役社長:宮原 博昭
・法人設立年月日:1947年3月31日
・資本金:19,817百万円
・売上高:1,641億円、連結子会社75社(2023年9月期)
東京証券取引所 プライム市場情報(証券コード:9470)
・所在住所:〒141-8510 東京都品川区西五反田2丁目11番8号
・電話番号:03-6431-1001(代表)
・事業内容:1946年創業の教育・医療福祉関連事業を展開する持株会社
教育分野:「学研教室」を始めとする教室・学習塾事業、
学習教材などの出版・コンテンツ事業、
教科書・保育用品などの園・学校事業など
医療福祉分野:サービス付き高齢者向け住宅事業、
認知症グループホーム事業、
保育園・学童などの子育て支援事業など
グローバル:150か国以上で活動・事業展開
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