50代を過ぎてから配偶者と別れるのが一般的な「熟年離婚」の定義ですが、いわゆる「老後」を迎える直前で独身になることは、経済的な面だけでなく精神的なことでも不安を抱える人は多いものです。
年を取れば、人と積極的に関わることが億劫だったり気が引けたり、新しい人間関係を築くことになかなかエネルギーを割けないという人もいます。
それでも、人と関わるからこそ心の安定が得られるのも事実です。
熟年離婚後の人間関係を楽しんでいる人はどんなことを意識しているのか、実録エピソードをご紹介します。
「母は私が小さい頃に離婚しており、母子家庭で育ちました。そのせいか、私の結婚について『離婚しないで済む人がいい』と繰り返していたのを覚えています。
弟は就職で県外に出てそこで結婚し、今は子どももいて幸せな生活を送っています。
元夫とはお見合い結婚ですが、子どもができずそのせいで仲がぎくしゃくして、元夫の浮気が発覚したこともあって、ずっと仮面夫婦状態でしたね。
何度も離婚を考えたけれど、染み付いた生活から抜け出す勇気がなく、年末年始をお互いの実家で別々に過ごすような夫婦で、母には心配されていました。
今ごろ別れたのは元夫から『離婚して両親と暮らしたい』と言われたからで、反対する理由はなく受け入れました。
離婚が決まったことを母に打ち明けたら、『それでも夫婦でいるほうがいいのに』と反対しなかったことをがっかりされて、『私が幸せじゃないのに、結婚にしがみつく意味がない』と、形だけの夫婦の虚しさについて夜通し話しましたね……。
母からすれば、娘までバツイチになるのがつらかったのだろうと思います。
でも、仕事をしていて友達もいて、独身になっても変わらず周りと付き合っていけるのは、私自身が離婚は前向きな決断と思っているからです。
離婚後は母と暮らしたいと言ったらそれはOKしてくれて、『離婚は悪』の考え方から離れられなかった母は、私が同僚や友達と楽しそうに過ごすのを見て少しずつ柔らかい態度に変わってきました。
独身になれば親との関係は以前より大事なものになるし、母との関係を立て直しながら、人間関係を築いていきたいですね」(50代/金融)
年を取っても、一緒に暮らすのであればやはり親の存在は軽視できません。
自分は自分と思っても、親との関係が悪いままでは、周囲との関わり方にも影響が出る場合もあります。
いくつになっても、親との関係を新しくやり直せるのが家族のいいところであって、ともに生きるこれからの時間のためにも、お互いを理解する努力を忘れたくないですね。