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『レッド・ワン』(11月8日公開)


 クリスマスイブの前夜、コードネーム「レッド・ワン」ことサンタクロース(J・K・シモンズ)が何者かによって誘拐された。心優しくマッチョなサンタクロース護衛隊長のカラム(ドウェイン・ジョンソン)は、サンタの存在を信じない世界一の追跡者にして賞金稼ぎのジャック(クリス・エバンス)と手を組み、サンタ救出のために世界中を飛び回る。


 だが、彼らの前に立ちはだかる誘拐犯は、サンタの力を利用してある恐ろしい計画を企てていた。


 『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(17)『ジュマンジ/ネクスト・レベル』(19)のジョンソンとジェイク・カスダン監督が三度タッグを組んだアクションアドベンチャーコメディー。


 例えば、クリスマスを信じない男が主人公のチャールズ・ディケンズの小説『クリスマス・キャロル』を現代風にアレンジした『3人のゴースト』(88)、果たしてサンタクロースは実在するのかを裁判する『三十四丁目の奇蹟』(47)とリメーク作の『34丁目の奇跡』(94)、その名もズバリの『サンタクロース』(85)、最近では、やさぐれた暴力サンタが登場する『バイオレント・ナイト』(22)など、クリスマスの奇跡とサンタクロースの映画は、毎年のように手を変え品を変えて作り続けられている。


 今回はサンタが誘拐されたことで、24時間以内に彼を救出しなければクリスマスが中止になるというアイデアが新味だ。そのピンチを回避するために、ザ・ロックと呼ばれスーパーヒーローを演じてきたジョンソンとアベンジャーズでキャプテンアメリカを演じたエバンスがバディとなり、加えて「チャーリーズ・エンジェル」シリーズのルーシー・リューも絡むところが見どころの一つ。北極にあるサンタの基地はハイテクで、クリスマスのサンタのハードワークぶりが描かれるのも面白い。


 全体のテーマは、クリスマス伝説の再構築とひねくれた大人になってしまったジャックの父親としての再出発というお決まりのパターンだが、やはりラストシーンにはほろりとさせられる。


 そもそもクリスマスだけを特別な1日だとは考えずに、毎日がクリスマスだと思えば、みんなが幸せに暮らせるのかもしれないが、なかなかそうはいかない。だからこそこうした映画に価値があるのだ。

『ヴェノム:ザ・ラストダンス』(11月1日公開)


 ジャーナリストのエディ・ブロック(トム・ハーディ)に地球外生命体のシンビオートが寄生したことで生まれたヴェノム。黒くて屈強な肉体と鋭い牙を武器に、長く伸びる舌で人を食らう恐るべき存在でありながらも、エディと一心同体となって強敵カーネイジを倒し、世界の危機を救った。


 エディとヴェノムは強い信頼関係で結ばれたバディとなり、見事なチームワークで敵を倒していく。そんな彼らは、シンビオートを極秘に研究する施設に侵入したことで特殊部隊から追われる羽目になる。さらには新たな脅威が地球外から飛来する。


 スパイダーマンの宿敵としても知られるマーベルコミックのダークヒーロー、ヴェノムの活躍を描いた人気シリーズの第3作。ヴェノムや前作で戦ったカーネイジら「シンビオート」と呼ばれる地球外生命体の創造主である最強の敵・邪神ヌルが登場し、エディとヴェノムは壮絶な戦いを繰り広げる。


 シリーズ過去2作で脚本や製作を務めたケリー・マーセルが、本作でも原案、脚本、製作を務めたほか、自らメガホンも取り、監督デビューを果たした。共演はキウェテル・イジョフォー、ジュノー・テンプル、リス・エバンス、前作から引き続きの登場となるスティーブン・グレアムら。


 前作『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(21)のアンディ・サーキス監督が「これはある意味、エディとヴェノムのラブストーリーだ」と語っていたが、最終章となった今回はそれをさらに深めた印象がある。


 エディとヴェノムの掛け合いの楽しさ、ヴェノムの変化、全てはエディのためにとヴェノムが示すサクリファイス…。まさかヴェノムでほろりとさせられるとは思わなかったし、見た目と中身とのギャップについても考えさせられた。


 また、この映画はニューヨークを目指すロードムービーとしての面白さもあるのだが、そのバックに流れる選曲が素晴らしい。


 デビッド・ボウイの「スペース・オディティ」、クイーンの「ドント・ストップ・ミー・ナウ」、キャット・スティーブンスの「ワイルド・ワールド」、アバの「ダンシング・クイーン」、そしてマルーン5の「メモリーズ」といった曲が見事にエディとヴェノムの心境とマッチしている。


(田中雄二)

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