店のドアの前にいながら、「お店の場所が分からなくて!」と電話した経験はこれが初めてである。それぐらい『MATO』は分かりづらい。分かりづらいというより、入り口がマンションの普通の部屋なので、「まさかここが店じゃないだろう」とスルーしてしまうのだ。
オープンキッチンなので作るのを見ながらお喋りできる
なんとか入店すると、真っ暗な空間の奥にまたドアが出てきた。謎解きハウスか。
開けてみると、100平米はありそうな広い部屋に、アールを描くカウンターが構える。中には、デザイナーズ風の黒い服にちょんまげ的ヘアスタイルのオシャレなお兄さんが立っている。
この時私は1人でロケハン(いわゆる覆面調査)だったので、このおシャレなお兄さんとトイメンで話せる自信がなかった。
素材名のみ書かれたコースの献立。期待をそそる
実はお兄さんは、堺筋本町の『BAR DUCK22』で多くの常連客に愛された山口真人(マト)さん。高校時代から美味しいものを作ってみんなに振る舞うのが好きだったという特異な趣味の持ち主で、バーでも、タレ・返しから自作したラーメン、スパイスから調合するカレーなどの凝り過ぎた料理を出していた。
器がすごいんですよ!
坂本健さんの作品など、どれもカッコイイ
念願だった自分の城を構えたのが2024年8月。「喋って作ってお酒を出す」の3拍子揃った店では、とことんオタク気質を発揮した(本人談)料理10品に、ドリンク8~9杯のペアリング含めて16500円という良心的なコースで早くも人の心を掴みまくっている。
赤と青の花椒、紹興酒等で作るタレで煮込んだ「醤肉」など、
和洋中の料理が次々と
喋ってみるとマトさん、最初に「イキッてる」ように見えた(すいません)印象とはガラッと変わり、めちゃくちゃ気さくで話しやすい人。
本誌「あまから手帖」では書かなかったが、「カラオケバーに勤める予定が音痴なのでやめた」などなど、実は経歴も生き方も面白すぎる。
宮城のカツオも脱水して旨みを凝縮。
ねっとり濃厚なコクが忘れられないほど
最初の「話、続くだろうか」という心配は無用、トークが弾みすぎて酒もしこたま飲んでしまった。懺悔をすると、1人でシャンパンをほぼ1本空けた(もちろん追加料金をお支払いしました)。
後日、取材を申し込んだ時に「ああ!あの1人で来てめっちゃ飲んでくれてた女の人!」と驚かれ、大いに反省した。
最後はデザートカクテルで〆る。
ジャクソンフルーツ、洋梨など季節のフルーツで
オマケ。撮っている人を撮る店主!さらにそれを撮る私!
“取材あるある”ですね
『MATO』
住所/大阪府大阪市西区京町堀1-8-28 エントレーズ2階
※こちらの記事は、関西の食雑誌「あまから手帖」がお届けしています。
あまから手帖=https://www.amakaratecho.jp/amakaratecho/