まだまだラインを引くのは難しい、数字的なこと。
現に、日本産婦人科学会でもアルコール量にして15ml、ビール350ml缶一本未満だと胎児への影響は少ないとする資料を掲載していますが、あくまでも目安であり、○○ml以下なら安全という量は確立されていないという前提のもと[i]。
一方、全世界でもっとも信頼されている妊娠と薬のデータベース マザーリスクでは、1日にビール8杯以上を摂取していると胎児性アルコール症候群(以下、FAS)になる可能性が高まる[ii]が、1日ビール1杯~2杯の軽度な飲酒の場合の胎児奇形率は非飲酒群との差は認めなかった[iii]などの研究報告もあり、1日1杯程度の妊婦の飲酒なら問題ないと結論付けています[iv]。
個人差もあるため、中々決められない妊娠中のアルコール摂取量。「実際に様々な知見もあるけれど、妊娠期についてはこれなら安全というラインを引くのは難しい」と竹内先生。
それでも、日本においては多くの女性が妊娠すると自然とアルコールを控え、結果的にFASになる胎児が生まれてくることはほとんど稀。それよりも、妊娠して数週間の間、赤ちゃんの器官がほぼできあがると言われている時期に妊娠に気付かずにうっかり飲み会でお酒を飲んでしまうことは注意が必要だそう。
うっかりでも数杯で赤ちゃんがFASになったというケースは日本ではほとんど見たことがないといいますが、常習的にアルコールを大量摂取している方は、赤ちゃんが欲しい時期になったら少し量をコントロールする必要がありそうですね。
[i]飲酒、喫煙と先天異常」-日本産婦人科医会・先天異常委員会委員 国立成育医療センター 周産期診療部 胎児診療科 左合 治彦
[ii] Obstet.Gynecol.,51:41,1978
[iii] J.Pediatr.,80:309,1987
[iv]医学のあゆみ Vol.222 No.9 2007.9.1