【日本全国を制覇したバンワーカーが教える至福のあれこれ・7】この連載では、実際に訪れたRVパークの中から、特に優れた施設を紹介している。選定にあたっては、トイレ、入浴施設、ゴミ処理、電源、水場、ランドリー、食事処、買い物といった設備が徒歩圏内にあり、快適に使用できることを重視している。このような条件を満たすRVパークは全国に点在しているが、今回は「さあ、世界遺産に泊まろう!」。そんな夢のような体験ができるRVパークを紹介する。世界遺産「古都奈良の文化財」の一角、「平城宮跡歴史公園」内に設置された「RVパーク平城京朱雀門ひろば」だ。
世界遺産のライトアップを独り占め
このRVパークの最大の特徴は、復原された朱雀門のすぐそばで車中泊ができること。古代の都の玄関口で一夜を過ごすという夢が3000円/1日で叶う。夜になると朱雀門はライトアップされ、1300年の時を超えて、かつての平城京の華やかさを今に伝える。
・名称:平城京朱雀門ひろば
・住所:奈良県奈良市二条大路南4-6-1
・利用料金:3000円/1泊
・利用可能台数:5台
・電源あり(100円/1時間)
・チェックイン:15時~19時
・チェックアウト:10時まで
昼間の朱雀門
多くの観光客がこの場所で写真を撮影している
RVパークの向こうに朱雀門が見える
夜はライトアップされ、独特の雰囲気に
ホテル並みの快適な設備
施設も充実している。RVパークスペースのすぐ裏にある「天平つどい館」に設置されているトイレはとても美しく、まるでホテルか百貨店のようだ。お風呂の心配も無用。シャワー施設「天平みはらし館」を300円で利用してもいいし、近くにある「亀の井ホテル 奈良」の温泉を利用してもいい。RVパーク利用者に限り850円(大人。小学生以下は無料)で入浴可能。「温泉(夜)+翌日朝食セット」(2800円)もある。
RVパークスペース。
後ろにあるのはトイレとして利用できる施設「天平つどい館」
食べ物にも困らない。「平城宮跡歴史公園」敷地内には「天平うまし館」をはじめとする飲食施設やカフェが点在し、奈良の郷土料理や和洋折衷のメニューを楽しむことができる。またお土産コーナーも充実しており、帰り際にお土産を買いたいときにも便利だ。
タイムスリップできる歴史体験
歴史体験も楽しめる。「平城宮いざない館」では、当時の暮らしを紹介する映像や立体模型などが展示されており、子どもから大人まで楽しみながら歴史を学べる工夫が随所に施されている。奈良時代の衣装を試着体験できるコーナーで、艶やかな装束に身を包めば、まるで平安絵巻の世界に迷い込んだかのような気分を味わえる。
衣装は男性用と女性用があり、数種類の中から選べる。
もちろん撮影も可
往時を偲ぶ歴史的建造物
園内の見どころの一つが、遣唐使船の復元モデルだ。実際に船内に入ることができ、遣唐使たちが夢と希望を胸に旅立った時代に思いを馳せながら「こんな小さな船であの海を渡ろうとしたのか」とその情熱に驚く。夜間はライトアップされ、幻想的な姿を見せる。
昼間の遣唐使船。
見た目は美しいが、こんな素朴な船で大海原を渡ったかと思うと恐ろしい
夜にライトアップされた遣唐使船
平城宮跡歴史公園では、朱雀門をはじめ、第一次大極殿、大極門など、かつての建造物の復原整備も着実に進められている。古代建築の伝統技能を継承する工匠たちの技が、往時の都の姿を現代に蘇らせているのだ。長岡京への遷都後に田畑となってしまった平城京だが、江戸時代末期からの調査研究や地元民間有志の活動を通じて、その保存整備が進められてきた。
大極門(第一次大極殿院 南門) 2022年5月撮影
観光拠点として抜群の立地
立地の良さも魅力の一つ。朱雀門広場から車で15分の距離には奈良国立博物館があり、その近くには興福寺、東大寺、奈良公園などもある。奈良観光の拠点として理想的な場所といえるだろう。
今年の5月にこの場所を訪れた著者は、奈良国立博物館で「空海展」を見た後、「ゐざさ 大和吉野 柿の葉寿司 東大寺門前夢風ひろば店」で柿の葉寿司を食べた。奈良グルメの一つなので、訪れた人はぜひ食べてみてほしい。
柿の葉寿司。柿の葉を剥がして食べる。独特の香りが魅力
歴史と現代が交差する特別な空間での車中泊。平城宮跡歴史公園が再現する奈良時代の平城京の姿は、訪れる人々に特別な体験を提供している。古都奈良の歴史的・文化的景観の中で、この上ない贅沢な時間を過ごしてみてはいかがだろうか。(マイカ・井上真花)
■Profile
井上真花
雑誌、書籍、新聞やWeb記事などを制作する編集プロダクション「有限会社マイカ」の代表取締役。コロナ禍を機にフルリモート体制となり、自作キャンピングカーを職場とする「バンワーク」を実践中。2024年7月に全国制覇を果たした。