2025年1月17日(金)より日生劇場にて待望の再々演を迎えるミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』。稽古場でのオーケストラ合わせの開催レポートが到着。併せて本日10日(金)18:00より制作席が順次開放される。



圧倒的な歌唱力と演技力を兼ね備えた、日本ミュージカル界を代表する豪華キャストが集結
半世紀に渡り数々の名作を世に送り出してきたミュージカル界の“生ける伝説”アンドリュー・ロイド=ウェバーが、『オペラ座の怪人』の後日譚として生み出したのが、本作、ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』。2014年、19年と、歴史ある日生劇場の舞台にふさわしい豪華キャストで上演を重ね、常に完売を記録してきた本作が、1月17日(金)より、同じく日生劇場にて上演される。前回公演からの継続キャストに強力な新キャストも加わり、2025年にしか見られない、新たな『ラブ・ネバー・ダイ』が誕生する。

制作席開放決定!
【販売開始】1月10日(金)18:00~順次開放
【対象回】貸切公演除く全日程  
※貸切公演=2月9日(日)17:30、2月11日(火・祝)17:30、2月18日(火)13:30
【席種・チケット料金】S席平日:16,000円/S席初日・土日祝:16,500円(税込・全席指定)
※座席位置は公演によって異なります



『ラブ・ネバー・ダイ』オーケストラ合わせレポート
(取材・文:橘涼香/写真提供:読売新聞社)

ファントム役:市村正親

東京・日生劇場で三演目の幕を開けるミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』。アンドリュー・ロイド=ウェバーが自身の代表作ミュージカル『オペラ座の怪人』の登場人物たちのたどる10年後の人生を自ら描いたこのミュージカルは、2014年に日本初演、2019年の再演共に喝采を集め、いよいよ待望の三演目の初日へのカウントダウンがはじまった。

そんな初日、1月17日を約十日後に控えた1月8日、都内稽古場には独特の緊張感と高揚感が漲っていた。今日はいよいよ稽古場にロイド=ウェバーの名曲を奏でるオーケストラ陣を迎え、『ラブ・ネバー・ダイ』のプリンシパルキャストとアンサンブルキャストが一堂に会し、はじめてのオーケストラ合わせが行われるのだ。

大稽古場のセンターにオーケストラが陣取り、指揮者の森亮平の更に後ろから音楽監督・歌唱指導の山口琇也らスタッフが位置するなか、思い思いの形で稽古場にいたキャストたちは、談笑を交わしたりストレッチをしたりなど、各々のペースで時間を使っている。オーケストラの前にスタンドマイクが用意され、それぞれのキャストが自分のナンバーで、マイクの前に立って行き歌う、というのが本日の全体の流れだが、そんなキャストたちが控える椅子と、山口たちのいる反対側の椅子とにびっくりするほどの距離があって、大がかりなこの公演全体の規模感を改めて見る気持ちがする。

開始10分前から発声練習がはじまるが、それも積極的に立って参加する人、台本のチェックを続けている人など、それぞれのスタンスに任されていることがプロフェッショナルな感覚をいや増しにしていく。そんなタイミングでこの広い稽古場に入る控えのスペースに、ラウル・シャニュイ子爵役の加藤和樹が、グスタフ役の少年たち植木壱太、小野桜介、後藤海喜哉を引き連れて差し入れを取りに走る姿がなんとも微笑ましい。(この差し入れは、加藤さんご本人からのものだったそう。)

やがて時間となり、今日の稽古の段取りが改めて提示される。ダブル、トリプルのキャストが組まれている関係で、はじめに、ファントム役橋本さとし、クリスティーヌ・ダーエ役真彩希帆、ラウル役加藤、メグ・ジリー役小南満佑子、マダム・ジリー役春野寿美礼で、1幕の全曲を当たっていき、その行程を、キャストを替えて3回繰り返す……と説明しつつ「もちろん休憩入れますよ!」と山口が付け加え、笑いも広がるなか、オケ合わせがはじまった。

オーケストラのチューニングが響いて、舞台の幕開けを担うM1「君の歌をもう一度」が、森亮平の振り下ろしたタクトで奏でられはじめる。途端に蛍光灯の白っぽい灯りに照らされていた稽古場に、まるで色がついていくような空気感が広がっていくのは、オーケストラ諸氏の確かな演奏と同時に、やはりロイド=ウェバーメロディ―の豊かさが、弦楽器、管楽器、パーカッションと各セクションのハーモニーでより立体化してくる賜物だろう。

そのなかに1人進み出た橋本は、森から感情ごと手渡された如くのファントムの、クリスティーヌその人と天上の声を渇望する想いを切々と歌っていく。今期初登場の橋本ファントムが、やはりひと味も、ふた味も違う新たな『ラブ・ネバー・ダイ』を生み出していることにドキドキさせられ、歌が佳境に差し掛かるにつれてその感触はどんどん強まっていった。歌い終え自席に戻ってきた橋本に、石丸幹二が称賛を惜しみなく伝えつつ、楽譜に当たりながら、気づいたことを話し合っている姿が、なんとも真摯でクリエイティブだ。

ファントム役:橋本さとし


続くM2「コニー・アイランド・ワルツ」はアンサンブルメンバーほぼ総出演の華やかなナンバー、とまとめると言葉の通りなのだが『オペラ座の怪人』のあまりに印象的なモチーフから、摩訶不思議なコニーアイランドの世界観に入っていくメロディーラインの巧みさが、豪華絢爛な舞台装置や衣装、更にサーカスの曲芸と言った視覚効果の全くないなかで聴くと音と音の重なりからくる重厚感と面白さが際立つ。アンサンブルキャストの声の連なり、台詞、ソロ、コーラスと続き、『ラブ・ネバー・ダイ』の音楽の魅力が横溢していった。

大きく盛り上がったところで山口から「ブラボー!な箇所と、指揮を全く観ていない箇所があるから修正を」との冷静な指示が入る。確かにここまでカンパニーはピアノ伴奏で各ナンバーを稽古していたはずで、オーケストラの演奏は合奏なだけに、ピアノ1台の演奏に比して、リズムやテンポがクリアに聞こえにくかったり、ピアノなら自然に歌い手に合わせていただろう演奏が指揮に集約されるから、歌い手もまた指揮に集中する必要があるなぁと、再認識させられる。この後も「芝居に入り過ぎて目をつぶってしまうと、必然的に指揮を見ていないことになる。今日はオーケストラと合わせる為の日だから、何よりもオケと合わせることを意識して」という指示が再三あり、ひとたびミュージカルナンバーを歌い始めれば、当然芝居心が動きだすだろう俳優陣の性と、それを俯瞰する自分も要求されるミュージカルの現場の厳しさとたゆまぬ努力を感じた。

そんな中でもどんどんナンバーは続き、小南メグ・ジリーの歌声が明朗でいつつ力強さがあり、複雑な彩を持ちバレエ教師としての顔が実にしっくりくる春野マダム・ジリーとのやりとり、ファントムとの10年間、さらにクリスティーヌとの再会に対する母娘の感覚の違いが自然に浮かび上がってくる様が耳目を引く。


マダム・ジリー役:春野寿美礼


メグ・ジリー役:小南満佑子


またM7「なんてひどい街」では、加藤ラウルが苛立ちを露わに歌い演じる姿が強い印象を残してくる。『オペラ座の怪人』から10年、いったい何がここまで彼を変えたのか?が、最も謎に包まれているのがラウル役だと思う。そのラウルのプライドの高さと、一方でコニーアイランドへこなければならなかったのは、自分に非があることもわかっている役柄の複雑な心の動きを加藤が繊細に示していて、その翳りが真彩クリスティーヌとボーイソプラノのグスタフとの相性が非常にいいリリカルな美しい声との対比になり、二人の間に生まれている溝が見えるようだ。これはおそらく組み合わせによって全く違って聞こえてくるだろう、という興趣も高まる。


左より)ラウル・シャニュイ子爵役:加藤和樹、クリスティーヌ役:真彩希帆


そして1幕のハイライトと言うべきM9「月のない夜」M10「遠いあの日に」。再会を果たしたファントムとクリスティーヌが、互いに秘めていた過去へと思いを巡らせていくデュエットナンバーだ。まずオーケストラの音の入りがなんともドラマチックで、心を鷲づかみにされるまま、言葉と音楽のコラボレーションが続く。ひと組目なだけに、橋本ファントムも真彩クリスティーヌも、オーケストラのどの音を聞いて、どの歌詞を乗せて立たせていくのかの研究に余念がない。山口からも様々なアドバイスが出て、それぞれの立場で「こうならないか?」が率直に言える現場の風通しの良さが伝わった。

ここで休憩が入りメグの二人、星風まどかと小南が並んで何か食べながら、双子のようにシンクロして動いているのが目に楽しい。と、石丸が「酸素が薄いね」とスタッフに進言。「換気しましょう。冷えるかもしれないから(羽織ものを)着てくださいね」と自らキャストたちに話して歩く気さくさにびっくりする。一方稽古を見守っていた市村正親は、グスタフたちを集めて話しに興じていて、良い現場感が際立った。

ここから怒涛の1幕後半が続き、M12の「懐かしい友よ」では、クリスティーヌとメグ、ラウルとマダム・ジリーが、実は様々な想いを抱えつつ「再会」を喜び合うナンバーの構造的な面白さがクッキリ。1曲のなかでどんどんそれぞれの役柄の深層心理が浮かび上がってくる。またM14「美の真実」は、才能の継承、選ばれし者たちの運命が描かれ、歌っている人もいない人もキャスト全員が曲のなかにいると感じられる一体感がすさまじいばかり。続く1幕ラストを締めるマダム・ジリーのソロナンバーまで、一気呵成の稽古が続いた。

一貫して山口から注意喚起されたのは、気持ちを込めるあまりに遅れない、「音は必要だけれど台詞のように」というオペラに近い形式で書かれている『ラブ・ネバー・ダイ』の成り立ちをまず感じさせるポイントだった。この辺りはキャストがオーケストラに慣れ、また舞台にいって更に深化していく違いない。

そんな稽古はキャストを石丸ファントム、笹本玲奈クリスティーヌ、田代万里生ラウル、星風メグ・ジリー、香寿たつきマダム・ジリーの組み合わせで1幕頭からリターン。同じ曲が全く違って聞こえるなど、様々な発見にあふれていたが、ここからは個々キャストに集中して書くと、石丸ファントムの歌の力が稽古場を掌握していく様はまさに圧巻。一方笹本クリスティーヌの歌声はあくまでもまろやかで、グスタフとの歌い合いにも優しさが満ちていただけに、ファントムと歌う「月のない夜」「遠いあの日に」には、それこそオペラのデュエット曲同様の、美しいハーモニーのなかそれぞれの最高の声でぶつかりあい、どこかでは音楽で闘ってもいるかのようなインパクトに、耳を奪われた。

ファントム役:石丸幹二


左より)ラウル・シャニュイ子爵役:田代万里生、クリスティーヌ役:笹本玲奈


また田代ラウルは、こうしたオケ合わせ、スタンドマイクの前に立っていてもずっと芝居は続いていて、ラウルとして笹本クリスティーヌに視線を送り、時には近づくなどの動きが滑らか。歌詞のひとつひとつが明晰で言葉がくっきりと立って聞こえるのも大きな特徴で、お酒さえやめればあのプリンス・ラウルに戻るに違いないとすんなり想起させるラウル像。そんな田代ラウルを見つめながら、稽古を共にしているのが楽しくて仕方ないという様子の加藤が、いきなり自席でパーカッションのエアー演奏をはじめると、それぞれの席に若干距離があるにもかかわらず、合図でもされたかのようにグスタフたちが共にエアー演奏をはじめて、乗りに乗っているのには、ここまで稽古で積み重ねてきた彼らの絆が見えるようだった。

他方、星風メグ・ジリーは歌声のなかにキュートでコケティッシュなものがにじみ、ファントムに対する思いを隠さない『ラブ・ネバー・ダイ』のメグ像にロマンティックな趣を加味していく。その母マダム・ジリーの香寿たつきは、オリジナルキャストの強みを如何なく発揮。時におどろおどろしい、とさえ言いたい迫力で魅了した。

メグ・ジリー役:星風まどか


マダム・ジリー役:香寿たつき



そして、この日3回目の1幕オケ合わせでいよいよ市村ファントムと平原綾香クリスティーヌが登場。驚いたのはM1「君の歌をもう一度」を市村が歌い始める前に、平原が自席を離れ、音楽監督の山口の更に後ろ、稽古場のもっとも遠い正面から市村を見つめる位置に移動したことだ。市村ファントムがクリスティーヌに寄せる思いは、その平原クリスティーヌへとまっすぐに飛んでいき、歌声がどんどん遠くへと伸びていく。何かもうここで既に『ラブ・ネバー・ダイ』オリジナルキャストの二人であり、日本のファントムのオリジナルキャストである市村と、この作品からミュージカル俳優としてのキャリアをスタートさせた平原の間にある特別なつながりが稽古場に広がっていくかのようだ。


左より)クリスティーヌ役:平原綾香、ファントム役:市村正親


だから続いたナンバーでも平原の居住まい、母としての慈愛の大きさはあふれ出るばかりだし、「月のない夜」「遠いあの日」のデュエットも、歌声は極めてオペラ的なのに、美声をぶつけあうと言うよりは語り合いに聞こえる、市村とのハーモニーがなんとも美しい。この相性の良さはちょっと桁外れで、市村の歌声そのものにあるファントムとして過ごしてきた時間の長さ、役としての説得力が相まった、ここに『ラブ・ネバー・ダイ』10年の歴史が詰まっていると感じさせる聞きものだった。

そんな様々な魅力に触れた稽古場をあとにした時には、ゆうに4時間以上が経っていたが、その長時間がまるであっという間。『ラブ・ネバー・ダイ』の音楽の魅力と、多彩なキャストによる異なる個性と魅力、その双方が感じられ初日が待たれる貴重な時間だった。
公演概要
ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』
期間:2025年1月17日(金)~2月24日(月・休)
会場:日生劇場
※ツアー公演はありません

キャスト:
ファントム:市村正親/石丸幹二/橋本さとし(トリプルキャスト)
クリスティーヌ:平原綾香/笹本玲奈/真彩希帆(トリプルキャスト)
ラウル・シャニュイ子爵:田代万里生/加藤和樹(ダブルキャスト)
メグ・ジリー:星風まどか/小南満佑子(ダブルキャスト)
マダム・ジリー:香寿たつき/春野寿美礼(ダブルキャスト)

グスタフ:植木壱太/小野桜介/後藤海喜哉(トリプルキャスト)
フレック:知念紗耶 スケルチ:辰巳智秋 ガングル:加藤潤一
⻘木美咲希、石川 剛、尾崎 豪、川島大典、神澤直也、木村つかさ、咲花莉帆、白山博基、菅原雲花、鈴木満梨奈、高瀬育海、高田実那、長瀬可織、光由、村上すず子、安井 聡、吉田玲菜 (五十音順)
スウィング:熊野義貴、小峰里緒

主催:TBS ホリプロ 読売新聞社
企画制作:ホリプロ
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