東京バレエ団『ドン・キホーテ』公開リハーサルより 撮影:細野晋司 東京バレエ団『ドン・キホーテ』公開リハーサルより 撮影:細野晋司

創立50周年を迎えた東京バレエ団が、13年前にロシアバレエの伝説、ウラジーミル・ワシーリエフが演出、振付を行った『ドン・キホーテ』を再演する。作品を甦らせるべく、ワシーリエフが12年振りに指導のため来日し、彼の来日直前まで指導を一任されていた初演キャストの斎藤友佳理による公開リハーサルと、記者懇親会が行われた。

東京バレエ団『ドン・キホーテ』チケット情報

冒頭のスペイン、バルセロナの街の場面では「主役だけではなく、民衆の一人ひとりが自分の人生を生きているのだから、皆さんにこの舞台の成功が掛かっています!」と、檄を飛ばす。主役を務める上野水香、柄本弾には「胸を開いて!もっと喜びを全身で表して!」「バレエの美しさは、毎日のイメージで生まれるもの。踊っているときには意識しないで、自信を持って!」と、ワシーリエフが自ら踊ってみせると、彼らの動きに見違えるような勢いや活気が加わっていく。

情熱を叩きつけるようなジプシーたちの踊りには「ハラショー!」と、感嘆を隠さず、岩国公演で主役を務める梅澤紘貴と、沖香菜子も観て欲しいと、リハーサルの最後に登場させて「彼らは踊りが正確で演技力があり、役者としての素質を感じます」と、若い才能へ期待を寄せていた。

ワシリーエフの作品への愛情は強く「ドン・キホーテは、私が最も愛するクラシックバレエのレパートリー。この作品は常に進化しており、ダンサーを成長させます。また、子供たちが作品に加わることで、発展していくための伝統を守る事になります。良いダンサーだと思って声を掛けたら、僕は小さい頃あなたの公演に出演した事があります!と、言われる瞬間は本当に嬉しい」と語り、斎藤は「今、誰と一緒に同じ空間でリハーサルをしているの?その価値を皆はわかっているの?と、毎秒自分の中で叫んでいます。現在、ロシアでもワシーリエフのように体当たりでリハーサルをしてくれる教師はあまりおらず、若いダンサーたちは彼の指導を夢見ているのに、それが叶いません。この先、ワシーリエフが与えてくれた事を、次の世代に伝えていきたい」と話す。

最後にワシーリエフは、「音楽には動きのすべてが刻み込まれているので、ジェスチャーと音楽が溶け合うような作品になって、初めてお客様の心に届くことになると思います。東京バレエ団にはロシアの伝統が息づいており、私はプロフェッショナルな彼らと仕事をすることが本当に幸せです」と、相好を崩した。伝説のダンサーが描く理想の舞台に、期待は高まるばかりだ。

9月19日(金)から21日(日)まで、東京・ゆうぽうとホールにて上演される。上野・柄本ペアは20日(土)14時開演。チケットは発売中。

取材・文:高橋恭子(舞踊ジャーナリスト)