現代能『陰陽師 安倍晴明~晴明 隠された謎…~』が9月、梅若実、野村萬斎、大空ゆうひ、桂南光(語り部)らによって上演される。公演に先駆けて記者会見が行われ、葦屋道満役の梅若実と、安倍晴明役の野村萬斎が登壇した。

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映画監督の吉田喜重が原作を書き、梅若実(当時・玄祥)が節付・演出・出演し、Mr.マリックの超魔術も取り入れて2001年に初演された本作。海外を含め各地で20回以上公演を重ね、変化・発展を遂げながら今に至る。2016年の大阪公演では、野村萬斎が安倍晴明役を演じ、玄祥、脚本補綴の藤間勘十郎と共同で演出も手がけたが、今回は萬斎の単独演出で生まれ変わる。

梅若実は「この作品を初演した2001年はちょうど、萬斎さんが映画『陰陽師』をなさった時期。萬斎さんの人気にあやかって、回数をさせていただきました(笑)。フランス、オランダなどにも参りましたし、晴明神社でも上演するなど、新作能としては、絶え間なく上演させていただいています。初演から10数年経ちましたので、今回は新しい視点、角度から見直すべく、萬斎さんに全面的に演出をしていただくことになりました。普段の能では考えられないような趣向もあり、面白い舞台になると思います」と語る。

野村萬斎は、「(実)先生と私と、葛葉姫の大空ゆうひさんと、“異形なる者”が3人集まり、安倍晴明の世界をお見せします。先生と私の陰陽師対決もあります。私は映画に出て以来、自分と安倍晴明という役のセット感に悩み、敢えて避けていたところもありますが、羽生結弦さんのおかげで少し離れることができたかなと思います。演技、音曲性、謡、舞踊などが詰まった、ミュージカルに負けない伝統芸能の深さを感じ取っていただきたいですね」と意気込む。

初演以来、様々なマジックや最新テクノロジーを用いていることも話題の本作。その意図や、古典的な表現との兼ね合いは?

「能というと幽玄の静かなイメージがあるけれど、能の世界にもイリュージョンのようなことを行った時代があったんですよ。僕がこの題材を最初に選んだのは、あまり皆さんに能を杓子定規でとらえないようにしていただきたいという思いがあったから。我々も楽しんでやっている作品ですし、そういうところは萬斎さんに任せれば絶対、大丈夫です」(実)

「我々の芸能のアドバンテージは、魑魅魍魎が都に跋扈する中世の時代感、闇が出せるところ。ですから、能狂言ではあまり使わない照明や音楽の効果、マジカルな演出なども取り入れつつ、何より能狂言であることを生かした、想像力をかき立てるダイナミズムを追求したいですね。“ジャパニーズ・アイデンティティ”を醸すパフォーミングアーツになると思います」(萬斎)

中世と現代が出会う、刺激的な公演となりそうだ。

公演は9月6日(木)・7日(金)に東京・新宿文化センター 大ホールにて。チケットの一般発売に先駆けて、現在プレリザーブを実施中。受付は6月26日(火)午前11時まで。

取材・文:高橋彩子