大所帯で音楽を作ること そのプレッシャーから「ひとりになりたかった」

――現在、ソロアーティストとしてアーティスト活動、ブランドプロデュース、ファンクラブまでご自身で運営されているとか。そういう活動を自身でやるのって、ものすごく労力がかかると思うんです。

武瑠 こんなに労力がかかるのかって、ビックリしました。本当にスタッフは誰も居ないので。

撮影:KAJII

誰かを雇うっていうのは、その人の人生を背負うことだと思うんです。背負えなければ雇ってはいけないと思っていて。

バンド時代は誰かを支えなきゃ、支えなきゃってすごく思っていた。そのプレッシャーに押しつぶされてしまった感もあったんですよね。

そういう意味でも、ひとりになりたかったというのはあるかも。

――そういう理由もあって、最終的には完全セルフプロデュース、かつソロという形になったわけですね。

武瑠 はい。人間、やれば最低限はできるんだなってわかりました(笑)。

普通セルフプロデュースだと、労力的にひとりで大きいことをやるのは大変じゃないですか? だから、最初はシングルを発売したり、イベントライブに出たりすると思うんですけど、それを裏切りたかった。

なので、まずワンマンを打とうって思ったし、今回発売するのはフルアルバムにしたんです。

現在の音楽ビジネスの中で、“完全無所属”である理由

――現在武瑠さんは、無所属という形でどこのプロダクションにも所属していない。あえて無所属を選んだ理由を教えてください。

武瑠 今って、音楽に関わっている人数に対して、売れるものがなくなっていると思うんです。音楽“ビジネス”が曖昧になってきている、というか。

前は単純にCDが売れたから、たくさんの人数が関わってもビジネスとして成り立っていたと思うんです。でも、今は単純に売るものがないのにも関わらず、同じ人数でビジネスをやろうとしているんですよ。とっくにビジネスモデルが崩壊してるんです。その悪影響は、まず演者に出てきている。

要は、関わってるスタッフの数を減らさずに、演者自体を減らそうっていう音楽社会の流れがある。なぜなら、演者に払うお金をスタッフや従来のビジネスモデルを回すために使いたいからです。

そういう流れの歪みで、事務所を離れたアーティストの話とか、自殺してしまったアイドルの話とかもありますよね……すごく悲しいことに。それだけ音楽業界の中では「やりたいことやってるやつはお金もらわなくていいだろ?」みたいな、そういう風潮が強いんだと思う。

――そういう風潮は確かにあるかもしれません。

武瑠 だから、一度自分で「音楽とはどれぐらいの人間を支えられるのか?」とか、極端な話「人が何人いれば音楽ビジネスは成り立つものなのか?」を知りたいと思ったんです。

「俺自身はどういう人たちとどういう音楽を、どういう体制でやっていきたいんだろう?」というのを、1回見直したかった。だからこその、それを考えるための無所属ですね。

――今の音楽業界のビジネスモデルの形によって、演者にしわよせが来ている、と。

武瑠 そうです。市場が小さくなってるにも関わらず、前と同じことだけをしてすがろうとしている人が多いから。特にマネージメント会社。

レーベルはCDしか売るモノがないから、さすがに変わろうとしてきているのを感じます。

でも、マネージメント会社はライブという商品があるので、まだビジネスモデルを支えられる部分もある。なので、変化するためのスタートが出遅れているように感じますね。