行方が分からなくなっている本の特徴は新書や小説、旅行のガイドブックなどが多かった。通常行われるべき貸し出し手続きを経ずに館内から持ち出されたケースが大半で、いわば、盗難にあったかたちだ。

横浜市がランダムに抽出した鶴見、保土ケ谷、港北、栄の4図書館監査した結果、鶴見図書館は10万859冊の蔵書に対して「不明除籍図書」が1121冊で1.1%と圧倒的に多かった。次いで保土ケ谷図書館の1250冊(0.7%)、栄図書館の701冊(0.6%)、港北図書館の1021冊(0.5%)となった。

毎年多数の蔵書の行方が分からなくなっているという事実を、市はどう捉えているのか。さらに詳しく聞いた。

 

現状は打つ手なし?

図書館の利用は無料だ。希望すれば自宅で読むこともできる。にもかかわらず、これだけの書籍がなくなっていることに、坪内課長は「悲しいことだが、自分の利益を最優先に考える人が増え、持ち出すという行為に対する『心のバリア』が低くなっているのでは」と話す。

前述の通り、不明除籍図書のほとんどは正規の貸し出し手続きを経ていないケースが多いが、「盗難である」と言い切れるだけの法的根拠はない。

中央図書館では出入口にゲートが設置されており、ここを通らないと館内に出入りできないようにしている。また、正規の手続きを経ずにゲートを通り抜けようとするとセンサーが反応する仕組みになっている。

バーコードシールによる管理がメイン
 

しかし、ゲート管理をしているのは中央図書館のみで、各区の図書館ではゲートがない。先に挙げた鶴見図書館は、詳細は言及できないが、ほかの図書館に比べて職員の書籍を持った人の出入りを確認しにくいという構造上の問題があることは市も認識しているという。

となれば、ICタグによる管理などが有効のようにも思えるが、現状では全館でそのような対策は取られているわけでない。

川崎市の中原図書館では、全書籍をIC管理しているが、これには膨大な時間がかかったそう。

横浜市でも同様の施策が有効のように思えるが、そのためには設備をそろえなければならない。2014(平成26)年度、横浜市は市内図書館の運営費として14億1352万6000円を計上しているが、これがさらに跳ね上がることになるため、優先すべき政策と財源のバランスも考慮しなければならない。