黒いラーメンとは?
黒い! スープはかなり黒い。熊本系の黒豚骨スープのような、とろみのある黒さともまた違う。おかしな表現かもしれないが、絵の具で溶かしたような黒さだ。
スープを飲むと、醤油の香りがとたんに鼻を刺激する。醤油ラーメンを食べているとは言え、ここまで醤油の香りがするスープは初めてだ。
それもそのはず。実はこのスープ、なんとたまり醤油を使って作られていたのだ。たまり醤油とは原料に大豆を100%使用しており、一般の醤油と比べて色も濃く、独特の香りが特徴だ。
細いちぢれ麺も、黒みを帯びている。スープの醤油がしっかりと麺にも染みており、黒いスープともよくマッチしていた。
また、一口、二口と食べるにつれて、スープが見た目ほど濃厚ではないことに気付く。最初は「わっ醤油だ!」と引いてしまうが、意外にあっさりしていて、これが次第に癖になってくる。
完食!
あまりに濃厚なスープなら、最後まで飲まないでおこうと思っていたが、結局飲み干してしまった。あっさりした中に、たまり醤油のコクが混じっているバランスがちょうど良く、すっかりハマってしまった。
食器を洗っていた店員の女性も、「私自身が10年以上癖になってしまっているんです」と漏らしていたほどだ。
そんな黒いラーメンを食べ終えたところで、お店の人から店の経緯を伺うことに。
店名が変わる前の「遥遥屋」とのつながりとは?
話を聞いたのは店長の宇野さん。店にはいなかったが、オーナーは松原氏という方だそうだ。
元々、ここは盛岡市で営業する遥遥屋(はるばるや)というラーメン屋の関東1号店。
盛岡の老舗ラーメン屋が関東に進出してきたのは11年前のこと。
通過人口、定住人口が集中する溝ノ口を選び、遥遥屋、溝ノ口店をオープンさせたのだそうだ。
当時のオーナーも一緒に川崎に来ていたそうだが、2年後に家庭の事情から盛岡に帰ることとなった。そして、遥遥屋は関東から撤退することになるのだが、それを引き継ぐ形でお店を始めたのが現オーナーである松原氏と、店長の宇野さんだったというわけだ。
現在の松虎亭という名前は、オーナーの松原氏の頭文字をとって、名付けたそうだ。
虎については特に意味がないとの話だった。
調理する人はその当時から変わっているそうだが、遥遥屋のレシピはそのまま使用。
真っ黒なスープも11年前からずっとこのお店で作られている。
ただ、本場盛岡ではこの店の「盛岡醤油老麺」よりも、若干味は薄いそうで、関東進出時にインパクトを付けるため、わざと黒いラーメンを強調して作ったという経緯がある。
遥遥屋として営業していた頃は、黒ラーメンとして売り出しており、見た目の印象と、だんだん癖になる味で勝負していたとのこと。