ここ数年で日本のスマートフォン市場で存在感が増しているファーウェイ。全国の主要家電量販店・ネットショップの実売データを集計した「BCNランキング」では、SIMフリースマホで2017年の年間販売台数シェアNo.1を獲得。18年に入っても勢いは衰えず、上半期でも販売台数シェアは首位をキープしている。6月からは大手キャリア3社にも端末の提供を開始。国内における戦略は今後どのように変化していくのか、デバイス事業のトップである呉波プレジデントに聞いた。
ワールドワイドの実売台数でiPhoneが目前
エントリーからハイエンドまで幅広いラインアップを揃えるファーウェイだが、特に主力製品として人気が高いのが「P」シリーズだ。モデルチェンジのたびに支持を伸ばしているが、6月に発売した「P20」シリーズは、過去最高のペースで売れている。呉波プレジデントによると「『P20/P20 Pro』の出荷台数は世界中で600万台を突破。日本でも昨年発売した『P10/P10 Plus』の数倍の売れ行き」とのことだ。
端末自体の評価が高いこともあるが、日本では販売戦略の変化も好調の要因だ。従来から提供していたMVNO各社に加えて、「P20 lite」をKDDI(au)で、「P20 Pro」をNTTドコモから発売。キャリアのユーザーを顧客に取り組むことでカバー領域が拡大した。取り扱い店舗も増え続けている。「P20シリーズはiPhoneと同じくらいの顧客接点を確保できた初めてのAndroidスマホではないか」と呉波プレジデントも成果に一定の満足感を示す。
ファーウェイはこれまでもキャリアに端末を提供した期間はあったが、3キャリアで同時に展開するのは今回が初。調査機関のトレンドフォースは、18年第2四半期にワールドワイドのスマホ実売台数でファーウェイがアップルを抜くと予想しており、国内のキャリアもこうした状況に敏感に反応したとみられる。
キャリアとMVNOの両輪で拡大目指す
とはいえ、日本市場においては、アップルのシェアはいまだに過半数を占めている。ファーウェイはこのことをどのように捉えているのか。呉波プレジデントに「iPhoneは射程圏内か?」と質問したところ、意外にも「競合は意識していない。日本市場でいかに生き残るかが重要」という謙虚な回答が返ってきた。
実は2016年11月に呉波プレジデントに「SIMフリー市場で勝つために必要なことは?」と質問を投げかけたときも同じ回答をもらった。当時はまだ日本のSIMフリー市場で2番手。挑戦者としての姿勢だと理解したが、SIMフリー市場で王者を獲得した現在もその姿勢は変わらないようだ。
ブランディングについても自己評価は控え目だ。成功の秘訣をたずねたところ、「まだまだ成功とはほど遠い」という回答が苦笑交じりに返ってきた。「SIMフリー市場参入時に20~50代の男性をターゲットに設定し、イノベーターやアーリーアダプターを中心に支持を獲得できたが、マスコンシューマーに向けた訴求はまだまだこれから」。
3キャリアに向けた端末提供は今回限りの施策ではない。「相手があってのことだが、われわれは継続することが重要だと考えている」と呉波プレジデント。MVNOとキャリアのどちらかに重点を置き、どちらかを切り捨てるつもりはなく、「ラインアップも区別せず、双方で選択肢を充実させていく」とコメントした。(BCN・大蔵 大輔)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。