東京都は「命を守る政策」としてエアコンの冷房使用を後押ししている
【家電コンサルのお得な話・265】 東京都は8月30日から、65歳以上の高齢者や障害者を対象としたエアコン購入補助制度を開始した。以前から実施している「家庭のゼロエミッション行動推進事業(東京ゼロエミポイント)」の一環として、対象者が省エネ性能の高いエアコンを購入した場合に8万円分のポイントを付与し、その場で割り引く制度である。 従来は買い替え時期や性能によって1万円から数万円程度の補助にとどまっていたが、8月30日以降、満65歳以上の高齢者などに限り、一気に8万円へと引き上げたことは大きな転換である。
「省エネ」エアコンは冬場にも効果を発揮
背景には、猛暑による熱中症被害の深刻化がある。東京都によると、昨年6~9月の熱中症による死亡者数は306人にのぼった。今年も6月中旬から8月半ばにかけて、都内だけで80人を超える高齢者が屋内で命を落としており、その多くがエアコンを使用していなかった。こうした状況を受け、都は「命を守る政策」としてエアコンの冷房使用を後押しする姿勢を打ち出した。
節電という視点からも、省エネ性能の高いエアコンへの買い替えは、大きなメリットがある。家庭で電気を多く消費するのは冷房より暖房であり、購入補助額の引き上げは冬場の電気代削減にも真価を発揮すると考えられる。
最新の省エネエアコンは10年前の機種と比べて消費電力が大幅に低く、特に暖房効率の改善が著しい。古い機種との電気代の差は大きく、センサー技術や冷媒効率の進歩によって少ない電力で十分な冷暖房を実現できる。対象となっている省エネ性能の高い「多段階評価点が3.0以上の機種(★3つ以上の機種)」では、さらにこの傾向が強まっており、今回の高齢者などに限った制度拡充は熱中症対策であると同時に、冬場の光熱費を抑える大きな利点を持つ取り組みといえる。
高齢者や障害者にとって、エアコンを安心して長時間使用できることは生活の質を支える重要な要素である。8万円の補助は購入時の負担を軽減するだけでなく、日常的な光熱費の節約という形で継続的な効果をもたらす。詳細については「東京ゼロエミポイント」の公式ホームページ(https://www.tz-points.jp/)に分かりやすくまとめられている。対象となる条件や申請方法などは、購入前に必ず確認しておくことをおすすめする。
省エネエアコンの普及は、高齢世帯に使いやすい環境を提供し、それは離れて暮らす家族にとっても安心につながる。東京都が進める施策の中でも、生活に直結した実効性の高い政策といえるだろう。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)
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堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所 堀田泰希を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実践的内容から評価が高い。







