モザイクも音声変換も一切なし! ニリ・タリ式“恋活”を包み隠さず披露
映画は、ニリ監督の18ヶ月にわたる“恋活”が、こちらの方が“赤裸々過ぎない?”と思うぐらいリアルに記録されている。その中には“婚活”する人々の本音もカットされることなく満載。互いに気があるのかどうなのか、そんな微妙な恋のかけひきも包み隠さず収められている。しかも、相手の男性もみんなモザイクなしの素顔で登場する。
「はじめは自分と同じような境遇の女性何人かを取材しようと思ったの。でも、まあ、当然、嫌がる人が多くて。それはそうよね、自分の恋人探しをカメラに追っかけられたらうまくいくものもうまくいかない可能性があるもの。で、もう、これは自分を差し出すしかないなと。当然、男性側も撮影を断る人はたくさんいた。だから今回、許可してくれて登場してくれた男性にはすごく感謝している。パートナーとしては縁がなかったんだけど」
その登場する男性には、怪しげな地下防空壕に住んでいる人がいたり、誰もいない夜の港に停泊中のヨットを待ち合わせ場所にする人がいたり。傍からみるとかなり危なっかしいのだが、危険な目にあうことはなかったのだろうか?
「1度もなかったわ。人生60年以上生きてきたから、危険な人は何度かやりとりすればなんとなくわかる。あと、カメラがひとつの防御線になってくれた。カメラの前ではなかなか悪いことはできないでしょ。そもそも撮影させてと言った時点で、たぶんよからぬこと考えている人は断るはずだから。もちろん最初の待ち合わせは人がいるパブリックなスペースでとか予防線はきちんとはった上でのことよ」
“婚活”はもはや世界共通のキーワード?
今回、“恋活サイト”でパートナー探しをしたニリ・タル監督だが、ところでイスラエルには日本の結婚相談所やお見合いパーティーといった男女の出会いの場はあるのだろうか?
「私の知る限りではないわね。だから実は最初困ったの。いざ、恋人を探そうと思っても、出会いの場がまったくない。それでたどり着いたのが“恋活サイト”だったのよ。でも、その結婚相談所って有料なのよね? そうだと、私はイスラエルにあっても利用しなかったかも。自分のパートナーは自分で決めるもの。誰かに進められてうまくいくもんじゃない。あくまで私の個人的意見だけど。でも、これだけパートナーを探している人がいるとなると、そういうビジネスはこれからもっと世界的に大きくなっていく可能性があるかもしれないわね」
もうひとつ切実な問題として浮かびあがるのが“性”の問題だ。
「インターネットでの出会いは当然グレーのゾーンが存在する。単なる一夜限りに体の関係を求めている人も、心から愛せる誰かを探している人も同じ壇上にのっている。でも、セックスから愛が始まる人もいれば、愛があって初めてセックスがある人もいる。そこは人それぞれ。ただ、私たちの世代になるとセックスはさほど重要ではない。その気があってもダメな場合が多々あるわけだし(苦笑)。それよりかは気持ちが大切。少なくとも今回、出会った人はみんなこれからの人生を一緒に歩いていけるパートナーを探していた。取材を通して感じたのは、“性”より、今、人は誰かとのつながりを求めていること。一概には言えないのだけれど、私の感じたところでは年代に関わらず、そういう傾向になっている気がする」
「日本では孤独死が問題になっているというニュースをよく目にします。そこから察するに、日本でも私と同じような“孤独”を感じたシニア世代の方々は多いのではないでしょうか? そんなみなさんにこの映画が少しでも勇気を与えられたらうれしい!」
映画『私の恋活ダイアリー』 12月20日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
離婚歴のある60歳の女性、ニリ・タル。子供も巣立ち、悠々自適の生活を送っていた彼女だが、ある日、何かが足りないことに気づく。それはこれからの人生を一緒に過ごしてくれるパートナー。一念発起した彼女は即“恋活サイト”にアクセス。最良のパートナー探しの旅が始まる! イスラエルのドキュメンタリー作家、ニリ・タル監督が自らの“恋活”を記録。あいち国際女性映画祭などの映画祭で上映され、あらゆる世代、特に女性たちの共感を集めたドキュメンタリー。