小型家電リサイクル認定事業者協議会の中島賢一会長

不要なPCや携帯電話などに含まれる金属を回収して東京五輪のメダルをつくる「都市鉱山からつくる!みんなのメダル プロジェクト」。回収する仕組みの構築から実際の運用を担う小型家電リサイクル認定事業者協議会(以下、SWEEE)の中島賢一会長に状況や課題について聞いた。


取材・文・撮影/細田 立圭志

金は世界の埋蔵量の約16%相当量が眠る

―― 国内には「都市鉱山」などと呼ばれる金属が埋蔵されていますね。

日本では、推定で毎年約65万トンのPCや携帯電話が使われなくなっています。そのなかに含まれる金属は、金額にして約844億円にもなります。リサイクルされずに埋め立てられたり、家の机の中などに眠っている小型家電を「都市鉱山」と呼び、金では6800トンに達すると推定されています。これは世界の埋蔵量の約16%にも相当する数字です。同じく銀は約6万トンで、世界の埋蔵量の約22%です。

―― そうしたなかで、SWEEEの役割や立ち位置をあらためて教えてください。

環境省と経済産業省が2013年4月に施行した小型家電リサイクル法は、使用済みの携帯電話やPC、デジタルカメラなど、個人宅から出る小型家電28品目が対象です。協力する小売店や市区町村が回収した小型家電は、SWEEEの会員であるリサイクル認定事業者が収集・運搬を含めて引き取り、金属精錬事業者に引き渡します。そこで、選別や精錬した金属資源を、最終的にメーカーが素材として購入しリサイクルされるわけです。

環境省や経産省が認定するリサイクル認定事業者は、現在52社あります。SWEEEは、この認定事業者が相互に意見交換したり、連携を強化する目的で、17年1月に組織化して発足した団体です。

ちょうどそのころ、リサイクルした小型家電の金属で東京2020オリンピック・パラリンピックのメダルを制作するという「都市鉱山からつくる!みんなのメダル プロジェクト」が立ち上がったのです。過去の五輪では部分的にリサイクル材でメダルをつくったことはあるようですが、全てのメダルをつくるのは史上初の試みです。

SWEEEの活動は、小型家電の回収やリサイクルを促進する政策提言や広報、普及、啓発活動、小型家電リサイクルの処理技術の情報提供などを行っていますが、まずは「みんなのメダル プロジェクト」を全面的に支援していくことで、小型家電リサイクルの認知向上や普及につなげていこうと取り組んでいます。

―― 小型家電のリサイクル事業者は数多くありますが、認定事業者との差はどこにあるのですか。

違法な不用品回収業者は論外ですが、合法的に運営しているリサイクル事業者よりも、さらに高いレベルの再資源化計画を国に提出して認可をもらっているのが認定事業者です。例えば、廃棄物を処理するフローに2社が参加していれば、その2社の報告を提出しています。資源の販売先も、全て報告するなど、透明化が徹底されているのです。

「みんなのメダル プロジェクト」でも、メダルを制作するまでのルートをつくりました。まずは自治体にプロジェクト参加の意思表示をしてもらいます。都市鉱山連携委員会という組織を、SWEEEの事務局機能を担っている日本環境衛生センターのなかに設置して、厳しく管理しています。

参加自治体が集めたものを、今度は認定事業者が引き取るわけですが、ここでも参加意思表明をしてもらうとともに、トレーサビリティーのシステムを提供しています。認定事業者が回収したものを精錬事業者に引き渡して量的な管理をするために、電子媒体で管理するのです。もちろん、精錬事業者にも意思表示をしていただき、リサイクル工程に参加してもらっています。こうした厳しい管理のもとで、メダルがつくられていくのです。

―― 小型家電リサイクルの認知が広がらない課題はどこにありますか。

分かりにくい部分もあって、消費者が不要な小型家電をどのように出せばいいのか理解されていないことが要因の一つと考えられています。回収方法は自治体によりさまざまです。不燃ごみとして収集して人力で小型家電をピックアップする自治体があるほか、役所やその出先機関、公的施設などに回収ボックスを設けているケースもあります。リサイクルセンターなどへの持ち込みにより回収したり、ごみステーションにおいてコンテナに分別して回収するケースもあります。

一方で、宅配便で回収する手法もあります。ダンボールにPCが入っていれば基本的に送料無料で、環境省・経済産業省の認定事業者であるリネットジャパンに送る方法です。ただし、個人情報などのデータ消去は有料になります。

また民間企業では、NTTドコモが販売代理店の店頭で回収したタブレット、スマートフォン、携帯電話を対象に、精錬事業者に直接持ち込んでいるケースもあります。実は、いろいろなところで小型家電を回収する仕組みはできていて、動いているのです。

―― 東京五輪では、メダルを何個つくる必要があるのでしょう。

計画している個数は金、銀、銅でそれぞれ1666個ずつなので、合計4998個になります。オリンピックとパラリンピックのほか、野球などの団体戦も含まれますから。金メダルは銀に約6gの金メッキをしてつくるので、銀は約2倍の量が必要になります。必要な量については、秋ごろに「東京2020組織員会」から公表される予定です。回収期間は17年4月~19年春ごろまでとなっています。

―― 家電量販店でも回収はできるのでしょうか。

認定事業者に委託している家電量販店は店頭で回収して、「みんなのメダル プロジェクト」に参加できます。逆に、産業廃棄物業者に委託している家電量販店は、プロジェクトに参加できません。秋からは環境省が認めたポスターが出来上がる予定ですので、認定事業者に委託している家電量販店の店頭でも周知活動が活発になるでしょう。