鈴木福 (C)エンタメOVO
ある任務のために森へやって来た若者たちが規格外のヒグマと遭遇する。闇バイトに手を染めた若者たちの運命を描く内藤瑛亮監督のサバイバルスリラー『ヒグマ!!』。相次ぐクマ被害を受けて公開が延期となっていたが、1月23日から全国公開される。本作で主人公の小山内蒼空を演じた鈴木福に話を聞いた。
-最初に脚本を読んだ印象からお願いします。
最初にいただいた企画書の表紙が黒かったのでちょっと怖い感じの作品なのかなと思いました。しかも闇バイトということでそっち系の話なのかと思いきや、すごく愛らしい主人公と、彼を取り巻く個性的なキャラクターが映えていました。特に印象的だったのが、最初にヒグマに襲われるシーンのト書きに「その奥に動くものがある。ヒグマだ。びっくり」と書いてあったので心をつかまれました。いきなり驚くんだって。それにヒグマだけ太文字で書いてあったのでインパクトがありました。
-演じた小山内というキャラクターをどのように捉えましたか。
かわいらしさと言いますか、高校3年生から大学に上がる年ならではの若さと言いますか、僕はその時期を過ぎましたけど、まだ近いので共感できるポイントがたくさんありました。ちょっと情けないところが面白いし、笑えるポイントになっています。優しさや、その中にある強さみたいなものもすごく感じさせてくれるので、そこを大事にしようというのはありましたし、コミカルなお芝居はすごく好きなので楽しんでやっていました。
-演じる上で、何か気をつけたことや心掛けたことはありましたか。
闇バイトをしてしまう理由も含めて、やってはいけないことをしているのだけれど、どこか共感できたり、このキャラクターが愛されるようになったらいいなと思いながら演じていました。どこか憎めないところがあって、前に進む強さも持っている子だと思ったので、そこをうまくやれたらいいなと思いました。撮影に入ってから、どんどん自分の色というか、僕らしいキャラクター性というか、僕がやるからこその小山内というのがはっきりしてきた感じがありました。監督から求められるものや、自分がやってみた感覚で、このぐらいはやってもいいんだとか、ちょっとこうしてみようかなということがどんどん広がっていき、小山内像がはっきりしてきたという印象があります。
-確かに小山内は最初は本当に弱々しいけれど、クマと対峙(たいじ)することで強くなって成長していきますね。
そうですね。そのグラデーションがはっきり見えてほしいというのはありました。最初はただ巻き込まれたという状況からのスタートですけど、最後は自分の意思表示がはっきり出てくる。そういうふうに成長したその先に、彼の強さがダサかっこいい感じで見えたらいいなと思っていました。
-鈴木さんにとって今回の映画はどのようなものになりましたか。
今まで僕が出てきた作品とはちょっと違いますし、これほどいろんな人に見てもらいたいと思う映画は初めてかもしれません。それぐらい皆さんに見ていただけることにワクワクします。自分がどうのというよりも、この作品自体がすごく好きです。もちろん好みはいろいろあると思いますが、こんな映画を見たと誰かに話したくなるような、話題の種になる強さをすごく持っていると思います。あとは、エンドロールの「鈴木福」という文字を手書きで書いていただけたのが、初めての経験だったのですごくうれしかったです。
-この映画の対象はクマですが、『ジョーズ』(75)のようなモンスターパニック的なテイストもありますね。
そうですね、監督とプロデューサーも含めてすごくいいチームで、みんなの映画への愛がふんだんに注ぎ込まれた映画になっています。映画好きの人が見ても、そこからにじみ出てくる愛を感じるような作品になっていると思います。
-クマはCG処理ですか。
8割が造形で2割がCGです。ほとんどの場合、人が入っています。ただ造形だと分かっていても、近くで見ると怖さを感じました。クマは現実にいるものだからというのは絶対にあったと思います。
-円井わんさんや宇梶剛士さんとの共演はいかがでしたか。
一観客として見ても、お二人ともすてきなキャラクターだと思います。ほかのキャラクターも、全員が出るべくして出てくるもので、それぞれが役割を全うしていて、誰一人欠かせないピースになっているところがすごくすてきだなと思います。わんさんは抑えたというか、落ち着いたトーンのツッコミ役ということで、お客さんも共感してくれるところがたくさんあると思います。また、宇梶さんが演じたハンターが、ストーリーの中にすごく大きな動きを与えてくれたと思います。本当にかっこいい方です。
-監督とはディスカッションをしましたか。
もちろんシーンごとの動きの指示はありましたし、ヒグマと対峙するシーンでは、こういう表情を見たいというのも伝えてくださいました。ただ、特に話し合わなければできなかったところもなく、監督の見たいものと僕がやってみたいことを同じ方向に向けていったので、撮影はすごくスムーズに進みました。
-完成作を見た印象は。
自分が思っていたよりもさらに面白くなっていました。エンターテインメントでありながら、ヒグマの恐ろしさや、闇バイトという社会的な問題を描く意義も感じられる。そこに僕らや監督、プロデューサーが伝えたい思いもしっかり乗っている。今だからこその作品になっていると感じました。僕の小学4年生の妹も試写を見て、ヒグマが怖いと言っていました。それぐらい強烈な怖さがあるにもかかわらず笑いや感動のポイントもある。本当に大好きな映画です。
-今、現実にクマによる被害が大きな騒動になっていますが、そういう時期にこの映画が公開されることをどのように感じていますか。
この映画の企画をもらった時は、ニュース番組で闇バイトの話題が絶えない時期でした。そうしたら今度はヒグマの話題が絶えなくなって…。それは、結果的には時局を捉えたというよりも先見の明があり過ぎたということになるのかもしれません。でも、僕たちがやったことは、決してそれをちゃかしたわけではありませんし、被害に遭われた方に対するお見舞いの気持ちは欠かさず持っています。ただ、監督はフィクションとして見られる工夫をしていると思いますし、リアル過ぎないところがこの映画の良さにもなっていると思うので面白く見られると思います。映画ってそういうものだと思いたいです。
-最後にこれから映画を見る観客や読者に向けて一言お願いします。
エンタメとして楽しめる映画でありながら、社会問題を表しているところもあります。先ほど誰かに話したくなる映画だと言いましたが、本当にその通りだと思います。この映画を見たら誰かに話をしたくなる。そんな話題の種になってくれたらうれしいです。それから間違いなく映画館で見てこその映画だと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)







