観客もゲームと気付かないアイドルと、普段の撮影と全く異なるAV監督たちの戸惑いを楽しむことになるが、後半それが崩れる。撮影時に起きたトラブルをカメラは容赦なく記録していたのだ。それは監督だけでなく、これまで楽しんで見ていた観客にも冷や水を浴びせるような映像だった。

しかし、ここからがダウナー系カンパニー松尾監督の本領発揮だ。現場の問題さえも隠さず描くことで見事な「転」へと昇華させてしまったのだ。

僕はドキュメンタリーに成功も失敗もないと思う。

なぜなら現実を記録することが鉄則だからだ。この世界がそんな簡単に二分化出来ないように。しかし、ドキュメンタリーも映像である以上、面白いかつまらないかに分けられる。もちろん『劇場版テレクラキャノンボール2014』と『劇場版BiSキャノンボール2014』は前者に決まっている。

凄いのはそれぞれが異なる魅力を持つことだ。これらの作品でカンパニー松尾監督と出会った人はその幅の違いに驚くことだろう。松尾監督は佐野元春の「つまらない大人になりたくない」という詞を体言する。

だからこそ奇跡のような大円団を撮ることも、悪夢のような失敗も「おもしろい」映像として描くことが出来るのだ。 

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて2作品上映!

●2月21日(土)19:30~ トークショー付き

この掟破りのアイドル・ドキュメントは是か非か!?
是非あなた自身の目で確かめてみよう。

 

  

『劇場版 BiSキャノンボール2014』
カンパニー松尾監督による「テレクラキャノンボール2013」の設定をそのまま生かし、2014年7月のBiS解散ライブに6人のAV監督が潜入し、メンバー1人に1監督が完全密着、一筋縄ではいかないドキュメンタリーを作るという趣旨でスタートした企画。BiSメンバーを騙す為に、あえて「普通のドキュメンタリーを撮影します」という偽のコンセプトで進め、解散ライブ前後3日間に完全密着(ホテルも同室!)した。2014/9/27には60分のスペースシャワーTV版が放送され、大反響を巻き起こすも、これはあくまで壮大な予告編に過ぎず、今回の劇場版が正真正銘の『BiSキャノンボール』である。

『テレクラキャノンボール2013』
2014年No.1の呼び声も高い傑作ドキュメンタリー。6人の男達が東京から仙台、青森を経由して札幌まで、車3台、バイク2台でレースしながらテレクラやナンパ、各種出会い系を駆使して現地素人をハメ倒す痛快セックスバトルドキュメント。そのあまりにも奇怪でハチャメチャな人間模様が爆笑と妙な感動を呼び、口コミだけで大ヒット。AVファンだけでなく、映画ファン、お笑いファン、サブカル好きを巻き込み日本各地でロングランが続く局地的カルトムービーである。「映画芸術」2014年日本映画ベストテン第5位。「映画秘宝」2014年ベストテン第9位。

ドキュメンタリー監督。代表作『童貞。をプロデュース』『あんにょん由美香』『ライブテープ』『フラッシュバックメモリーズ3D』等。現在テレビ東京系列で『山田孝之の東京都北区赤羽』(山下敦弘と共同監督)が放送中。アニメーション映画『音楽(仮)』をプロデュース。

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