「Archer BE700」を試した
新生活時期に向け、今より自宅をアップデートしたいと考えている人は多いだろう。テレビやPC、スマホなどのデジタル機器の買い替えは、その手っ取り早い選択肢だ。ただ、現在所有している各デバイスの持っているポテンシャルを底上げするという方法もある。それがWi-Fiルーターを交換することで実現するネットワーク環境のアップデートだ。今回は現行の最新規格であるWi-Fi 7に対応するTP-Linkの「Archer BE700」を試して、どのように生活や仕事の快適性がアップしたのか、どのような人におすすめできるのか、紹介していきたい。
そろってきたWi-Fi 7対応モデル エントリーモデルの欠点に注意
Wi-Fi 7は2024年にWi-Fi Allianceの認証プログラムが始まり、規格最終版は25年に発行された無線LANの最新規格。25年でだいぶ対応モデルのラインアップがそろってきた。価格もこなれてきたことで、買い替えも検討しやすいタイミングだ。
Wi-Fi 7がこれまでのWi-Fi 6/6Eと大きく異なるのは、帯域幅の広さだ。最大チャネル幅が160MHzから320MHzに拡張されたことで、データをよりスムーズに通信できるようになった。道路で例えるなら、1車線から2車線になり、同時に通行できる車が増えたというイメージだ。
Wi-Fi 6は基本的に2.4GHzと5GHz(6Eでは6GHzも含む)のいずれかの帯域を選択して通信するため、混雑時にチャネルの取り合いが発生しやすかった。しかし、Wi-Fi 7では対応端末同士で複数帯域を同時利用できる「MLO」により、通信の安定性と効率が向上する。
Wi-Fi 6は高効率(High Efficiency=HE)を求めた規格で、同時接続性などが優れている。一方、Wi-Fi 7は高速通信(Extremely High Throughput=EHT)を求めた規格といえる。
Wi-Fi 7対応モデルはすでに1万円台のエントリークラスのものも登場している。とりあえず、使ってみたいという人なら、そうしたモデルを選択するのもいいが、「複数台の端末を同時にネットワークに接続している」「オンラインミーティングやゲームで通信速度を求められることがある」という人なら、ぜひ少し背伸びしてミドルからハイエンドのモデルを選択するのもありだ。
エントリーモデルは6GHz帯に非対応だったり、アンテナや帯域幅が抑えられていたり、せっかくのWi-Fi 7の魅力を生かしきれない場合がある。その点、ハイクラスのWi-Fiルーターならオーバースペックに思えても、価格に見合った恩恵はちゃんと受けることができる。「Archer BE700」はまさにそうした側面に目を向けるのに、うってつけの一台だ。
TP-Link「Archer BE700」は一般家庭ではオーバースペック?
TP-Linkの「Archer BE700」は2025年1月に発売されたモデルで、Amazon.co.jpの価格で4万円台。ハイエンドクラスのモデルで、エントリーモデルと比較すると約4倍の価格差がある。
構成はトライバンド+10Gbps/WAN+2.5Gbpsポートで、理論上の最大通信速度は6GHzで11528Mbps、5GHzで2882Mbps、2.4GHzで688Mbps(公称値)。6本のアンテナを内蔵しており、広範囲に安定した信号を届けることができるハイスペックマシンだ。
このほか、ビームフォーミングで接続デバイスにピンポイントで信号を送ったり、10Gbpsポートを備えていたり、Wi-Fi中継機と簡単に接続してメッシュ環境を構築できたり、機能面でも隙がない。「凄いけれど、一般家庭でこれだけのスペックは必要?」と思ってしまうほどの充実ぶりだ。
一人暮らしをしていて、接続するデバイスはスマホのみ、多くてもそれにPCが加わるくらいというのであれば、確かにこれはかなりのオーバースペックとなるだろう。しかし、2人以上で暮らしている人や在宅ワーカーは普段接続している端末の数を思い浮かべてみてほしい。
PC、スマホ、タブレット端末、ゲーム機、テレビなど、意外とネットワークに接続している端末は多い。家族が同時に別々の場所で、PCでオンラインミーティング、テレビで配信コンテンツ視聴、スマホで大容量のデータ通信が必要なオンラインゲームをしているというシーンも珍しくはないはずだ。
そんなとき、映像の途切れにくさや一時的な画質低下などの小さなストレスはないだろうか。Wi-Fiの体感は単純なスペックとしての回線速度だけでは測ることはできない。Wi-Fiルーターの混雑耐性や同時接続の効率性も重要になってくる。Archer BE700のハイスペックが生み出す「余裕」は、そうした小さなストレスを生活や仕事から取り除いてくれる。
3LDK/1Gbps回線のマンションに導入! 体感はどう変わった?
ここからは実際にArcher BE700を筆者宅(3LDK/1Gbps回線のマンション)で使用したときの実測値と体感を紹介していきたい。
Archer BE700の本体デザインは、直方体で中心部がくびれており、砂時計のようなフォルムになっている。棚上などに露出設置してもインテリアの雰囲気を壊さないようなスタイリッシュな仕上がりだ。
インターフェースはシンプルで、操作するのがWi-Fi機能のON/OFFを切り替える「Wi-Fiボタン」、端末とのペアリング設定を暗号キーなしで行える「WPS接続ボタン」、LEDのON/OFFを切り替える「LEDボタン」のみだ。
初期設定は「Tether」という専用アプリが用意されているので、そちらでガイドに従って設定していく。ハイエンドモデルだからといって特別な設定はなく、慣れていない人でも迷うことなく数分で作業を完了することができる。
筆者宅は間取りの中心にある納戸にWi-Fiルーターを設置するスペースが固定されているので、今回のテストでは、その場所から「どの場所で、どんな端末が、どれだけの速度で通信できたのか」を示していきたい。
まずは、基準値として筆者の書斎にあるWi-Fi 7対応PCで無線の通信速度を測定してみた。結果は「下り842.03Mbps/上り519.75Mbps/PING 8.00ms/JITTER 1.38ms」。1Gbps回線環境では理論値を引き出すことはできないが、回線上限に近い数値が安定して出ている点は評価できる。これならオンラインミーティングなども十分に余裕をもって快適にこなせるレベルだ。
次にリビングのテレビでNetflixの4K動画、スマホ2台でYouTube動画を再生しながら、再度Wi-Fi 7対応PCの通信速度を測定してみた。結果は「下り809.10Mbps/上り520.72Mbps/PING 8.00ms/JITTER 1.58ms」。ほぼ数字が下がることなく、安定した通信を維持していることが分かる。
筆者宅では現在、Wi-Fi 7に対応する端末は1台(仕事用のPC)しかなく、全ての端末でパフォーマンスを完全に生かせるわけではない。したがって、各部屋でどのくらいの通信速度が出るのかの検証はWi-Fi 6対応のノートPCで行った。結果は以下の通りだ。
ここからいえるのは、Wi-Fiルーターから距離のある部屋でも通信速度の減退は少ないということだ。壁や水などでもっとも電波が届きづらい風呂場でも300Mbpsを大きく超えているというのは、かなり心強い数値だ。実際、風呂に入りながらスマホで高画質の動画視聴やゲームを試してみたが、詰まる瞬間もなく、とても快適だった。
もちろん、全ての端末が性能をフルに生かせるWi-Fi 7対応であれば、ベースとなる通信速度が上がるのでさらに快適になる。しかし、Wi-Fi 6環境下であってもArcher BE700が実現する「通信速度の安定性」は十分にメリットを感じられる。高性能CPUや高出力アンテナなどの基本設計が上位モデルであることも、Wi-Fi 6環境で安定した通信を実現するのに大きく寄与してくれる。
筆者宅のように「Wi-Fi 7対応端末は一部(あるいはない)で、Wi-Fi 6対応端末がほとんど」という状況は、おそらく多くの家庭にも当てはまると思うが、Wi-Fi 7対応端末が増えていくのは時間の問題といえる。
iPhoneであれば24年9月発売のiPhone 16以降にラインアップされているシリーズはWi-Fi 7に対応しており、これから買い替えていく人は順次「Wi-Fi 7の恩恵を受けられる環境」に意識せずとも変化していく。
そうした数年先を見据えても、ワンランク上のWi-Fi 7対応ルーターを使用することはやりすぎではなく、「将来の安心」にもつながる選択になる。エントリーモデルと比較すると値の張る買い物にはなるが、家族全員が同時にそれぞれのやりたいことを快適にできるという恩恵を考えれば、人によっては高級なスマホやPCを購入する以上の価値向上につながるということは、ぜひ押さえておきたいところだ。(OFFICE BIKKURA・小倉 笑助)







