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現代医療のセーフティーネットというべき療養病棟を舞台にした沖田×華のコミックを原作に、死を迎える人が最後に出会う人=看護師の目線で死と生を描いた「お別れホスピタル」。2024年に放送されたこのドラマの続編「お別れホスピタル2」が、4月4日(土)と4月11日(土)の二週にわたってNHK総合で夜10時から放送される。前作に引き続き、主人公の看護師・辺見歩を演じる岸井ゆきのが、作品に込めた思いを語ってくれた。
-2年ぶりの続編となりますが、制作が決まったときのお気持ちはいかがでしたか。
前作を撮影しているときから、皆さんと「続編ができたらいいね」と話していたんです。ただ、そうは言っても実現することは少ないので、決まったときは本当にうれしかったです。視聴者の皆さんが、この作品を支持してくださった結果なわけですから。
-看護師役ということで、演じるにあたって、実際の看護師の方からお話を伺ったりもしているのでしょうか。
前作のとき、実際に療養病棟にお伺いし、看護師の方からケアの方法などについて指導を受けました。今回はそれをベースに、撮影現場で医師や看護師の方から指導を受けながら、前作で未経験だった所作や作業を、違和感なくできるようにしていきました。
-本作をご覧になる方の中には、前作をご存じない方もいると思いますが、岸井さんの考える本作の魅力とはなんでしょうか。
普通の医療ドラマでは、医師や看護師の方は治療を目的に患者さんをケアします。でも、この作品では医師や看護師が、人生の最期を迎えようとする患者さんたちをみとる姿を描いているんです。前作のときは、こういった医療ドラマがほかになかったこともあり、実際にそういうお仕事をされている方たちから、喜びのお言葉をいただくこともありました。私も前作で初めてそういう病棟があることを知ったので、今回初めてご覧になる皆さんにも、ぜひ知っていただけたらと思います。
-今までにない医療ドラマということですね。
ご覧になる皆さんにとっては、このドラマがご自身の人生を見つめなおす機会になるのでは、と思っています。劇中では、人生の最期を迎えようとする患者の方が、「あのとき、ああしていれば…」と若い頃の後悔を語ります。それがまるで、人生を巻き戻して再生する時間というか、人生の棚卸しをしているようにも感じられて。同じように視聴者の皆さんが、ここで自分の人生を一時停止して巻き戻すように見つめ直したら、未来がよりよい方向に変わるのでは…と。「生きること」は、同時に「死に向かうこと」でもあるので、このドラマが「どう生きるべきか」とご自身を振り返るきっかけになったらうれしいです。
-辺見がケアする入院患者を演じるのは、伊東四朗さんやYOUさん、阿川佐和子さんといったベテラン俳優の皆さんです。岸井さんは皆さんのお芝居をどのように受け止めましたか。
皆さん、私よりもずっと「死」を身近に捉えていらっしゃる印象で、人生の経験値が段違いだなと、つくづく思い知らされました。それはきっと、多くの別れを経験しているからなんだろうなと。本読み(撮影前、出演者が揃って台本を読みながら内容を確認する作業)では、会議室で台本を読んでいるだけなのに、実際の病棟の様子が思い浮かぶほどの迫力があって。私もいろいろな作品を経験していますが、あんなに心が持っていかれた本読みは初めてでした。撮影現場でも、患者さんが亡くなる場面では看護師の方が「痛みはこのくらい」と教えてくださるのですが、そこで「この病気で亡くなった知り合いがこうだったから、こうしてみたら?」といった感じでお芝居のアイデアを出されていて。その上で、本番では魂のこもったお芝居をされるんです。
-すごいですね。
それでも、「カット」がかかった途端、皆さんとても明るく振る舞っていらっしゃって。私だったら、役を引きずってしまい、すぐには切り替えられないと思います。きっと皆さん、亡くなった親族やご友人など、思い出す相手がいらっしゃって、この作品を通してそういう方の人生を肯定しようとしているのかなと。皆さんの姿を見て、そんなことを感じました。
-医師の広野誠二役の松山ケンイチさんとは前作に続いての共演ですが、松山さんとはどんなお話をしましたか。
辺見と広野は、亡くなる患者さんをみとることが多いのですが、松山さんとは「そこにいるのが辺見と広野なのか、岸井ゆきのと松山ケンイチなのか分からなくなるくらい、皆さんのお芝居に魂を感じる。それくらい素の自分たちが映っているかもしれない」というお話をしたことが印象に残っています。そういう私たちの映像をご覧になった演出の柴田(岳志)さんも、「半分ドキュメンタリーのように感じる」とおっしゃっていて。それはやはり、皆さんが真摯に誠実に、お芝居をされているからなんだろうなと。
-そのような感覚になることは、普段のお芝居でもあるのでしょうか。
私はお芝居の際は、できるだけその場で湧き上がった生の感情を生かすように心がけています。そういう機会が増えるほど、役に自分が近づいていき、重なる瞬間が生まれると思っています。ただ、それは簡単ではなく、関わる皆さんの気持ちが同じ方向に向かっていないとできないことなんです。この作品では、私たち一人一人が、「“生きる”とは?」、「人生の最期をケアするとは?」と答えのない問いに向き合い続ける中から、一つ一つのシーンが出来上がっています。だからこそ、そういう瞬間が生まれるんだろうなと。それが成立するこの作品の現場は、本当にすてきだと思います。
-そういう経験をしたこの作品は、岸井さんにとってどんなものになりましたか。
以前から私は、「与えられた運命の中でどう生きるか」ということを考えるような作品に出演させていただく機会が多かったのですが、それでも「死」は遠いものと捉えていました。でも、前作を経験して以来、「生きる」ことと「死ぬ」ことをひとつにして、より深く考えるようになりました。そういうことを考えずに過ごす方が楽なのかもしれませんが、「死」について考えることで、生きていることの価値を実感できるのではないかなと。そういう意味では、「死」について考えるのは、決してネガティブなことではないんですよね。
-岸井さんの生き方に大きな影響を与えたわけですね。
私も以前は、恐怖や不安を感じて敬遠していましたが、「死」をポジティブに捉えることで、人生を前向きに考えられるようになりました。「死」は、いつかは向き合わなければいけない問題ですし、同時に私自身の死生観も前作を経験したときから日に日に変わっています。だから、「どう生きるべきか」というのは答えのない問いですが、それでも考え続けることが大事なのかなと。皆さんにとっても、この作品がそういうきっかけになったらうれしいです。
(取材・文/井上健一)
土曜ドラマ「お別れホスピタル2」
〈前編〉4月4日(土)/〈後編〉4月11日(土)[総合]夜10時







