塩野瑛久(ヘアメイク/奥平正芳、スタイリスト/Lim Lean Lee)
NHKの大河ドラマ「光る君へ」(24)の一条天皇役が話題となり、今年もドラマ「嘘が嘘で嘘は嘘だ」「未来のムスコ」に出演し、『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』、『SAKAMOTO DAYS』、『マジカル・シークレット・ツアー』と公開作品が相次ぐ塩野瑛久。その最新出演作が、7月3日公開の『ラブ≠コメディ』だ。
数々のラブコメ作品で人気を集めながらも、重厚な作品で認められたいと願う俳優・神崎麗司(中島健人)が、アイドル・南風美里(長濱ねる)との出会いを通じて成長していくラブコメディ。本作で塩野が演じるのは、麗司の俳優仲間の渕上颯真。「以前からリスペクトしていた」という中島との初共演の舞台裏や、役にも通じる自身の俳優としての思いを聞いた。
-塩野さんの演じる渕上颯真は、主人公・神崎麗司の俳優仲間でありながら、大作ドラマに主演するなど実力派俳優として活躍し、麗司に焦燥感を抱かせます。そういう麗司との関係を踏まえ、颯真という役をどのように作っていったのでしょうか。
麗司と颯真の間にある“隣の芝生が青く見える”といった嫉妬心は、この仕事をしていれば誰もが通る道だと思います。僕自身も感じたことがありますし、きっと中島さんも同じではないでしょうか。恐らく、お互い身に染みて感じてきたことだと思います。そういう意味では、麗司と颯真の心情は理解できました。ただ、2人の過去を描くシーンは限られているので、その中で颯真が抱えているものをどう表現すればいいのか、じっくり考え、紙谷(楓)監督とも話し合いを重ねた上で撮影に臨みました。
-ラブコメをバカにする颯真に麗司が怒りをぶつけるシーンでは、中島さんからまさかの“壁ドン”をされていましたね。
あのシーンは、麗司と颯真の関係について、撮影時に中島さんとしっかり話し合いました。その中で、「麗司は颯真を仲間だと思っているから怒る。どうでもいい相手だったら怒らない」という中島さんの言葉が印象的でした。そこまで考えてくださっていたことを知り、中島さんをリスペクトする気持ちがさらに増しました。実は最初に台本を読んだときは、それほど気に留めていたシーンではなかったんです。でも、中島さんが熱い思いをぶつけてくださったおかげで、印象に残るシーンになりました。おかげで、颯真と麗司の関係性が、よりくっきりと浮き彫りになったと思います。
-そのほか撮影中、印象に残ったエピソードがあれば教えてください。
僕はその場にいなかったのですが、中島さんが長濱さんを“お姫様抱っこ”するシーンの撮影に立ち会った皆さんが「体幹がブレなくてすごい!」と絶賛していたんです。それは、あまりにも多く“お姫様抱っこ”をしてきたので、そのために必要な筋肉が発達したからじゃないかと。だから僕は、それを「お姫様抱っこ筋」と名付け、中島さんにも「宣伝しておきますね!」と伝えました(笑)。
-中島さんとの初共演はいかがでしたか。
ご一緒するのは初めてですが、僕は普段の言動を見聞きする中で、中島さんをリスペクトしていたんです。その印象が、いい意味でまったく変わらなくて。一貫した信念があり、どんなことにも全力投球、真っすぐで熱いものを持っている方だなと。中島さんのそういう部分が、そのまま麗司に生かされていると思います。だから、日頃から中島さんを応援している皆さんがこの映画をご覧になっても、違和感なく楽しめるはずです。
-劇中では、麗司や颯真が人や作品との出会いを経て成長していく姿が描かれています。俳優として数々の出会いを経験してきた塩野さんにとって、最近ではNHKの大河ドラマ「光る君へ」(24)への出演も大きな出会いだったと思います。放送から2年がたち、今振り返って、どんな思いをお持ちでしょうか。
当時、僕はNHKの連続テレビ小説や大河ドラマのオーディションに落ち続け、「ご縁がないのかな」と思っていたんです。そんなときに受けたのが、「光る君へ」のオーディションでした。その分、「自分のままでいこう」と開き直り、肩の力を抜いて臨んだおかげか、合格することができました。撮影には、自分が積み重ねてきたものを信じ、すべてを出し切るつもりで臨みましたが、スタッフの皆さんもプロフェッショナルな方ばかりで、そんな現場でお芝居できるのは、役者冥利(みょうり)に尽きるなと感じました。だから、大河ドラマにぜひまた出演したいですし、いつかは作品を背負えるような俳優になりたいという大きな目標ができました。
-視聴者からの反響も大きかったですね。
皆さんの応援のおかげで、僕の演じた一条天皇という役がより輝きましたし、僕自身を広く知っていただけたことも、大きな励みになりました。それまで街中で声を掛けていただくのは若い女性が多かったのですが、「光る君へ」以降は、年齢や性別に関係なく、多くの方から声を掛けていただけるようになりました。つい先日も、女性の親子連れの方から声を掛けられたばかりです(笑)。
-本作では、テレビドラマ制作の舞台裏を通じて、チームワークの大切さも描かれています。塩野さんは、チームワークを大切にするためにどんなことを心掛けていますか。
僕はまず、自分のやるべきことに全力で取り組むことを第一に、その上で現場を楽しみながら、自分が支えられる部分は支えていければと思っています。そのためには、ほかの出演者や関係者の方々とコミュニケーションをとり、不安な点は解消していくことが大事なのかなと。
-その点、中島さんから座長としての姿勢を学んだ部分もあるのでしょうか。
学ぶことばかりでしたが、僕が中島さんと同じようにできるかどうかは別の話です。だから、いずれ自分がそういう立場になったときの参考になればと思いながら、学ばせていただきました。そういう座長としての中島さんの姿を見られたのも、今回の大きな収穫でした。
-完成した映画をご覧になった感想はいかがでしたか。
コメディであると同時にお仕事ドラマやヒューマンドラマの要素もある作品だなと。その中で、中島さんらしいコミカルなシーンもありますし、同時に中島さんのすごさを再認識できる映画だと思います。さらに、麗司や颯真、ほかの登場人物たちの心に残るせりふも随所にちりばめられ、さまざまなメッセージが詰まった作品なので、ご覧になった後、温かな気持ちで映画館を出ていただけるのではないでしょうか。
-それでは最後に、塩野さんの考える本作の見どころを教えてください。
コメディ的にやや誇張されてはいますが、この業界で仕事をする僕たちにとっての“あるある”の連続で、「ほぼリアル」と言っても差し支えのない撮影現場の様子が描かれています。だから、「映画やテレビドラマはこんな風に作られているのか」と考えながらご覧いただくと、より楽しめるのではないでしょうか。これをきっかけに映像業界を志す人が増えてくれたらうれしいです。
(取材・文・写真/井上健一)







