唐沢寿明
おもちゃと子どもの絆を描いてきたディズニー&ピクサーの人気シリーズの最新作『トイ・ストーリー5』が、7月3日から全国公開された。現代的なテクノロジーというかつてない脅威に、おもちゃたちが手を取り立ち上がる姿を描いた本作で、30年来、主人公のカウボーイ人形ウッディの声を吹き替えてきた唐沢寿明に話を聞いた。
-『トイ・ストーリー4』(19)以来、約7年ぶりの吹き替えでしたが、いかがでしたか。
7年は長いですよね。もう終わったのかと思っていました(笑)。今回はいろいろな点で、また原点回帰をした感じがしました。もともとは、おもちゃと人間との関わりが描かれていましたが、『4』では、おもちゃだけの話になっていたので、やっぱり子どもとの関係というのは、あった方がいいと思いました。
-30年間、ウッディの声を吹き替えてきたわけですが、そのことについての感慨はありますか。
最初は、まさかこんなに長くやるとは思いませんでしたけど、とにかく間が空くので、もうちょっとまめにやってほしいです(笑)。でも、(オリジナルのウッディの声の)トム・ハンクスさんも69歳になるんですね。僕はまだ日本で公開していない頃にアメリカで最初に見たので、その時は声がどうというよりも、自分とは声質が全然違うと思いました。それから実写とアニメーションの中間みたいな絵に驚いたことを覚えています。
-今回は、子どもたちの遊び方の変容というのがテーマの一つとして描かれていましたが、映画を見ながら、幼い頃の遊び方などで思い出したことはありましたか。
僕も、仮面ライダーや超合金の人形で遊びました。でも、おもちゃで遊ぶのは結構想像力が必要だから、いつの間にか夢中になってしまう。大人でも夢中になりますから、子どもが夢中になるのは当たり前なんじゃないですかね。
-俳優という仕事も想像力が必要だと思いますが、幼い頃の遊びが今の仕事につながっていると感じるところはありますか。
遊びの部分ではあまりないですね。例えば、僕はブルース・リーが好きでしたけど、まねをするとかグッズを集めるとかはしませんでした。ブルース・リーは哲学を学んでいたので、哲学って何だろうと思って本屋さんに行って調べたりしましたが、よく分からなかった。でも、「ブルース・リーの言葉」というのがあったので、それをずっと読んだりしました。そういう意味ではそれが俳優の仕事につながっているところはあるかもしれないです。
-今回のウッディは、メタボになって、頭にはげができていたりと、ビジュアルの変化がありましたが、その点はどう感じましたか。
あれは、トム・ハンクスさんのインタビューを見ると、ウッディは長年帽子を脱いだりかぶったりしてきたので、それで頭がすれたんだと。おなかに関しては経年劣化で綿が下に垂れてきたからだと言っていました。それを、おもちゃも年を取るということと引っかけているんじゃないかと思います。
-ウッディのキャラクターをどのように捉えていますか。
おもちゃだけど、一番正直で人間らしいキャラクター。最初にバズ・ライトイヤーが来て、彼がアンディのお気に入りになった時の嫉妬の仕方は半端じゃなかったですからね。もちろん人間にもそういう部分はあるから、そういうことはしちゃ駄目だよ、仲良くしなきゃいけないよというメッセージでもあるんだけど。今回ウッディは、そこまでではなかったですが、その代わり今回はバズの方にそんな感じがありました。
-唐沢さんがこのシリーズに感動するポイントはどこにありますか。
やっぱりおもちゃにも出会いと別れがあるという、人間の世界と同じようなストーリーを入れているところかな。愛されていたのに捨てられたとか、おもちゃの側に立つとそれは悲しいことだろうし、そういう部分が人間の社会とうまくリンクしていると思います。
-『4』から『5』の間に何が起こっていたのかは謎ですが、唐沢さんはその部分をどう補いましたか。
でも結局、ウッディはコミュニティーを作っていろんなおもちゃと一緒にいましたよね。そこでも仲間を助けたりしていたんじゃないかな。今回も、捨てられたおもちゃが出てきて、それが新しいキャラクターになっていますけど、そういうおもちゃはどこに行ってもいますから。
-唐沢さんにとって『トイ・ストーリー』なりウッディはどういう存在になっていますか。
あまり仕事の感覚ではやっていないです。とにかく間が空くので前のことは忘れてしまいます。今回も、もう一度見返したりして、思い出しながらやっていくという感じでした。だって、最初は30年前ですから、もうそんなに細かく覚えていないです。でも、その時に子どもだった人が親になって子どもに見せている可能性もあるわけだし、そう考えるとすごいシリーズだと思います。ピクサーの中でもこんなに長く続くものはないんじゃないですか。
-ウッディ以外でお気に入りのキャラクターは?
キャラクター的にはやっぱりバズがいいですね。羽も出てくるし、音が出たりもするし。子どもにはバズの方が人気があるんじゃないかな。
-バズ役の所ジョージさんとの関係性はどのような感じですか。
所さんの世田谷ベースに何度か遊びに行ったことはありますが、いろんな物をくれるんです。大きな袋に戦車とかが入っていて。あれは自分が要らなくなった物なんじゃないかという話もありますが(笑)。所さんは裏表が全くない人です。ただ、バズの声は所さんだと皆が思いますよね。例えば声優さんで言えば、山田康雄さんがしゃべったらルパンだと思うというような。そういう一番分かりやすい声の人です。しゃべったらもう声質がバズですもん。僕がしゃべってもウッディだとは言われませんから。
-完成作を見た感想を。
原点回帰をしていて面白いな、いろんなものを入れ込んでいるなと思いました。かつて子どもだった大人が見ても、泣くと思います。僕もやっぱりジーンときましたから。それがどの辺りの場面なのかは見てのお楽しみです。
-『3』と『4』の監督が「これで終わり」と言っていましたが、今回また作られました。今後も続きができると思いますか。
最初の『トイ・ストーリー』の時に来日した製作陣から、お土産で人形をもらいました。その時、このプレゼントはすごいだろと言われたけど、僕にはピンとこなかった。でも、監督のようなマニアの人にしかこういうものは作れないと思うんです。子どもが寝たらおもちゃが動き出すなんてことは普通は考えないですから。特に日本人にはそういう感覚はあまりなくて、そんなはずはないで終わってしまうけど、やっぱり彼らは夢と希望を持っているんです。そこからこういう素晴らしいものが生まれてくる。だからやめようと思っても、またやりたくなる人が出てくると思います。これだけ面白いものができてしまうと、またやるんじゃないですか。こちらはそれにつられてまた何年も待たされるわけです。トム・ハンクスさんがインタビューで「自分たちができなくなったら、AIが声をピックアップして、勝手にやるんじゃないか。その恐怖もある」と言っていましたが、それでやってくれるのだったら、そんなに焦らなくてもよくなるので、それはそれで楽になっていいと思いますけど(笑)。
(取材・文/田中雄二)







