驚きの「鬼」と「楽器」の融合!?
『仮面ライダー響鬼』が、そのモチーフに選んだのは何と鬼と楽器! 西洋の甲冑を思わせるフォルムだったクウガやアギト、龍騎やブレイドとは一転して、一気に和風のデザインに。しかも、太鼓を叩いて敵を倒す仮面ライダー。それが響鬼。
その思い切ったビジュアルを初めて児童向けテレビ雑誌の表紙で目にした時の絶大なインパクトは今でも忘れられません。
響鬼は、鬼を下敷きにしている為に、顔も装飾も妖怪のようで、カラーリングも子どもたちがアプローチしやすい色合いではありません。ヒーローなのに、決して"ポップ"ではないそのデザイン。
それまではネクストブレーカー的な若手のイケメン俳優が務めていたメインのライダー枠を細川茂樹さんが担当するという大胆なキャスティングもビックリな作品でした。
中盤で路線変更が行われ、ファンの間でも様々な意見がある『仮面ライダー響鬼』ですが、デザイン面でもストーリー面でも新しい要素と価値観を盛り込んだとびきりの意欲作だったのだと私は思います。
様々なモチーフを用いて、広がりをみせるライダーワールド!
『響鬼』の反動からか、次作の『仮面ライダーカブト』は、昆虫モチーフへと立ち戻り、メカニカルな要素を盛り込みながらも明快に『仮面ライダー』へと路線回帰を果たしますが、平成ライダーは次々に魅力的なモチーフをその体内に取り込んでいくのです。
後に、複数の映画シリーズが作られ、平成ライダーシリーズでも屈指の人気作となった『仮面ライダー電王』では桃太郎と電車をモチーフにし、日本昔ばなしと鉄道のミックスを行い、『仮面ライダーキバ』では、吸血鬼をメインに狼男や半魚人といった西洋妖怪、モンスターをコンセプトに。
ひとつのモチーフに限定するだけではなく、『仮面ライダーオーズ/000』では不思議なメダルの力を使い、昆虫、鳥類、哺乳類、海洋生物、更には恐竜まで、ありとあらゆる生物を身体の各パーツに割り振り、その特性を組み合わせて怪物と戦うキメラ的なライダーを登場させました(余談ですが、後のシリーズではキメラをモチーフにした『仮面ライダービースト』なんてライダーも登場します)。
他にもロケットと宇宙服をモチーフにし、アストロスイッチを使って宇宙へと飛び出した『仮面ライダーフォーゼ』、魔法使いと宝石をキービジュアルに持ち、指輪の力でそのフォームを次々に変化させていく『仮面ライダーウィザード』……といった実に個性豊かなライダーたちが、"仮面ライダー"という大英雄譚にその名を刻んでいるのです。
また、斬新なデザインの『仮面ライダー響鬼』の後には、ベーシックな昆虫モチーフの『仮面ライダーカブト』が始まり、それが終わると、再度思い切ったコンセプトの『仮面ライダー電王』がスタート。或いは、メカニックでSFな『仮面ライダーフォーゼ』の次は『仮面ライダーウィザード』に繋がり……といった具合に、各シリーズ毎にライダーのデザインや物語のコンセプトに振り子のような大きな幅が感じられるのも興味深いところです。