政界の階段を駆け上る女性政治家、三崎皓子の奮闘とさまざまな思惑が交錯する複雑な人間模様を描いた幸田真音原作の小説がドラマ化された。4月12日からWOWOWの連続ドラマW「スケープゴート」として、全4話で放送される。
皓子(黒木瞳)の若き日の恋人で、現在はテレビ局役員として政界の陰で暗躍する矢木沢峻を演じる石丸幹二が、政界ドラマの常識を破る「スケープゴート」の斬新さと、ともに日本を代表する舞台人として意識し合ってきた黒木との初共演を語る。
-読み応えのある台本ですが、どう感じましたか?
爽快でした。たぶん、世の中の人に刺激を与える1作になるだろうと思いました。女性のきめ細やかな心情が書き込まれていますし、おぼれそうになっている彼女も描かれている。かれんな女性でも男と同じだけの仕事はする。そういう彼女だからこそ、みんながサポートして、祭り上げていくという形もあると思えますよね。
-リアリティーは感じましたか?
ええ。登場人物みんなが、いろんなものをてんびんに掛けながら生きているのがリアルでした。
-矢木沢はなかなか本音を見せません。
ある人の前で見せる表情は自分の中の持ちカードのひとつで、別のところにまた違うカードを持っている。分かりにくい表情をすることで別のカードが見えたりするので、あまり分かりやすい演技をしないようにしようと自分で決めました。前半はダークな部分も出し、後半は正義感のある部分を多く出したりしていました。謎が謎じゃなくならないようにだけは気を付けました。
-矢木沢はなぜ彼女を祭り上げるように行動し、陰でサポートしたんでしょう。
自分の野望は必ず達成するという強い思いがあるでしょう。そして、かつて自分のほれた女がやっぱり最高の存在だということを自分に対して証明したかったんでしょうし。
-皓子を自らの野望達成のために利用するということは否定していないんですよね。
そう、でも利用するというか、お互いをかなり意識しながら生きていくということだと思うんです。ひとつはっきり言えることは、矢木沢は皓子に今もまだほれているということです。
-初共演の黒木瞳さんの演技はいかがですか?
かれんな一方で言うことは言う、やることはやるという皓子の姿は、とてもチャーミングです。
-劇団四季と宝塚歌劇で同じように舞台を中心に活動されてきて、今はテレビでも活躍されている。そういう点では共通点は感じますか?
共通しているなと思うのは、声のレンジや大きさを舞台で出せるような声にまで広げてコントロールしているということ。ちゃんと舞台俳優としての武器を使っていらっしゃると感じますね。
-それは、声を含めた身体全部を使って演じているということですか?
そうです。信念のある言葉を言うときはリアルに声を大きく張って話されますし、その時々のせりふに合った声を出されます。マイク頼みではなく、身体を使ってちゃんと発声されているので、横で一緒に演技していてもリアリティーがあります。それに黒木さんはしっかりと作品を読み込んで演じていらっしゃる。そんなところも尊敬しています。
【石丸幹二(いしまる・かんじ)】俳優。大河ドラマ「花燃ゆ」に加え、4月から「アルジャーノンに花束を」にも出演。7~8月は音楽劇「ライムライト」を全国8都市で上演する。