2月22日は「にゃんにゃんにゃん」と猫の鳴き声にちなんで、猫の日とされています。日本では猫を含めたペットの数が子供の数を上回るなど、共に暮らす家族の一員としての存在感が増しています。漫画家には猫を飼う人が多いこともあってか、猫の登場する漫画がたくさんあります。作者や飼い猫が直接登場するエッセイ風の漫画もありますが、今回は普通に猫のキャラクターが活躍する、お勧めの3作品を紹介します。
まずは少年画報社の「ねこぱんち」で連載中の『猫絵十兵衛 御伽草子』(永尾まる)です。
舞台は江戸時代、猫絵師の十兵衛と猫股のニタ。1人と1匹のちょっと不思議な日常を描いた作品です。「猫絵師?」と思う人も多そうです。主人公の十兵衛は絵師なのですが、人を描く事が苦手で、動物や植物を中心に描いています。彼の描く猫に、猫股のニタがちょっと意識を込める(タバコの煙を吹きかけたりする)ことにより、ネズミが寄って来なくなるので、いろんな所に重宝されているようです。猫絵師なる商売が実際にあったわけではなさそうですが、江戸時代の浮世絵や細工物を見れば、猫をモチーフとしたものがたくさんあります。それだけ猫が日常生活に密着していた存在なのでしょう。
ニタは元々猫仙人なだけあって、いろいろ不思議な力を備えています。そうは言っても、妖怪や物の怪などがバンバン登場して、それらの退治に精を出すようなストーリーではありません。ほんのちょっとだけ物陰に足を踏み入れるような、ゆるやかに不思議な世界との交錯が作品の魅力だと思います。
十兵衛以上に、ニタが重要な位置を占めていることから、猫のキャラクターもたくさん登場します。そんな猫達に囲まれても、ニタは貫禄を示しています。さすがは元猫仙人と思うのですが、実は人間に化けても相当の美形なんですよね。普段の生活態度を見れば、『小太りでタバコや酒好きのおっさんだろ』と思うのですが、メインキャラクターの立場が許さないのかもしれません。十兵衛もなかなかの好青年ですし、もうちょっと身なりを整えれば、違った方面にも人気が出そうです。
次は少し前の作品ですが、白泉社「LaLa」で連載されていた『みかん絵日記』(安孫子三和)です。
1988年から約6年の連載に加え、1992年にはテレビアニメとしても放送されたので、子供の頃に見た方もいると思います。草凪家に迷い込んだ猫は、体毛がみかん色だったことから“みかん”と名付けられます。当初は普通の猫と思われていたものの、酔っ払った時に人の言葉を話すことができるとばれてしまいます。そんなみかんと周囲の人々や猫との日常を描いています。
玩具メーカーのタカラが発売した“バウリンガル”や“ニャンリンガル”もありますが、ペットと意志の疎通をしたいと思うのは、ペットを飼う人達にとって、ひとつの夢なんでしょうね。ただし話せたら話せたで、悩みの種が1つ増えるのは言うまでもありません。この『みかん絵日記』でも、話せるがゆえに起こってしまうトラブルが、何度も発生します。もっとも話せることでトラブルの解決に繋がることもあるので、一長一短ではあるんですね。やはり動物は動物のままで良いのかなと思わされますが、『それでも1回くらいは話してみたい』と感じるのが飼い主の人情に違いありません。
最後は竹書房の「まんがライフオリジナル」などで連載中の4コマ漫画『ポヨポヨ観察日記』(樹るう)です。
童謡『雪やこんこ』に“猫はコタツで丸くなる”とあるように、丸まった猫にはとても愛らしいものを感じます。しかしこの『ポヨポヨ観察日記』に登場するオス猫の“ポヨ”は、ボールに手足がついたような、まん丸のフォルムをしています。OLの萌(もえ)さんに拾われたことから、佐藤家の飼い猫となり、癒しや番犬ならぬ番猫にと大活躍しています。
まん丸で一見鈍重に見えるのですが、スピードやパワーは抜群、猫思いの優しさもあって、メス猫にも、そしてオス猫にも慕われています。その出生が謎に包まれていたのですが、野良猫だった時に離れ離れになっていた家族(母猫と姉?猫)と再会、まん丸な甥っ子も2匹生まれました。愛らしいまん丸猫の増加が予想されるのですけれども、ポヨは突発的なまん丸変異種なのか、ポヨのお父さんに秘密があるのか、その辺りはまだ謎に包まれています。アニメやゲームにもなるなど、今後も楽しみな一作です。
来月で東日本大震災から1年です。被災地に置き去りにされたペットや家畜の問題は、今後も解決策を探ることになるでしょう。また保健所などに持ち込まれ処分される動物の数も増え、虐待されたりいたずらに売買されたりする動物も後を絶ちません。個人個人の動物に対する心構えと共に、行政の対策が望まれるところですが、6月から施行される動物愛護管理法の改正では、なぜか犬や猫の夜間展示を禁止するのみに終わってしまいました。これでは肝心の販売業者にはほとんど影響がないのに対し、猫カフェが厳しい対象になるなど、的外れな措置になっています。猫を始めとした動物の登場する漫画はこれからも増えていくと思いますが、きとんとした1つの生き物として、漫画に登場するキャラクターを眺めてみれば、また違った発見があるのではないでしょうか。