「eスポーツ」がユーキャンの流行語大賞候補に挙がるなど、今年は国内でeスポーツ市場が立ち上がり、PC専門店や家電量販店でもゲーミングPCのコーナーが盛り上がっている。20年前から先行者としてグローバルでゲーミングPCに取り組んできたデルで、コンシューマーとスモールビジネスを統括するフィル・ブライアント プレジデントは「PC is not dead」とPCの先行きは明るいと熱く語った。
取材・文/細田 立圭志
写真/松嶋 優子
デバイス間の垣根がなくなる
デルの日本におけるゲーミングPCの販売伸び率は前年比30%増でとても元気です。われわれは、日本でゲーミングPC市場が立ち上がる20年以上も前から、グローバルで取り組んできた実績があります。ですので、市場の平均を上回る伸びが可能なのです。デルのゲーミングPCブランドのALIENWAREの単体でみても、グローバルではこの2年間で30%以上という破竹の勢いをみせています。2年前に投入したGシリーズも好調です。
ポテンシャルは大変に高いと考えています。日本のゲーム人口は7000万人といわれています。もちろん、プレイヤーの数ではこれまでのコンソールやスマホゲームが多くてゲーミングPC人口は負けていましたが、伸び率でみるとゲーミングPCが今、もっとも元気です。
また、コンソールゲームが主体だったことから国内ゲームメーカーが強い市場でしたが、ここ数年でSteamのようなPCゲーム配信のプラットフォーマーが日本に進出し、日本語でできるゲームタイトルが増えたことで、PCゲームは勢いが増しました。人気が高まっているeスポーツも、ゲーミングPCが主体なのでポテンシャルは高いでしょう。
デルだけが取り組むのではなく、業界全体で盛り上げていく必要があります。そのために、3つの要素が必要です。まずはeスポーツを振興することです。プラットフォームのSteamのタイトル数は、1日当たり21タイトルという、とても速いペースで増えています。2年前のゲーム数が約7000だったことを考えると、ゲームのタイトル数が増えるのに比例して、PCでゲームを楽しむ人も増えているわけです。
次に、デバイス間の垣根を取り払うことです。私には子どもが3人いますが、3人ともゲームをします。彼らは10~15年前はコンソールゲームを楽しんでいましたが、今ではマルチプラットフォームで、Xboxや任天堂switch、モバイル、そしてPCゲームなどを楽しみます。まずゲームをXboxにダウンロードしてから、PCで楽しむという使い方です。従来であれば、これらのデバイスはお互いに断絶しあっていましたが、今では垣根が薄れてきているのです。
私の子どもは「フォートナイト」というゲームが好きなのですが、車で移動中はスマホで楽しみ、家に帰ったらPCでプレイします。このように、シチュエーションに応じてプレイするデバイス間の垣根が、取り払われていくことが大切なのです。
最後が、見逃されがちですがeスポーツの影響力はとても大きいということです。というのも、eスポーツを観戦したり視聴している人の多くがPCで視聴しているからです。
PCは死んでない
デルはeスポーツチームのTeam Liquidを支援しています。また、中国ではeスポーツ専用のアリーナをつくっています。世界中どこにいても、われわれは一貫したサービスやサポートが提供できるので、ぜひゲーマーの方々には頼っていただきたい。チームやトレーニング支援など、より幅広い対応をしていきたいと考えています。
日本でもeスポーツの振興やチームを支援しています。また、ALIENWAREのリアル店舗は、デモセンターとしての役割を担っているので、ゲーミングのコンテストやワークショップなど体験できる場として機能しています。
10年ほど前に「PC is dead」という記事が出ましたが、実際はそんなことまったくなく「PC is not dead」なのです。この記事が出た後に、新たに出荷されたPCは約10億台です。PCの時代が終わったといわれても、これだけのPCが出荷されているのですから、依然としてニーズはあり、元気だということです。しかも、そのうちの8億台が4年以上たっているPCですから、これを新しいPCに変えるというポテンシャルがあるのです。
生産性の高い仕事をするには、PCに勝るデバイスはありません。そしてPCを使ってできることは広がりました。ゲーミングもその一つです。20年前にPC使ってゲームをする人は20歳前後の男性など、本当に限られていました。しかし、今では誰でもPCを使ってゲームをしています。社内調査では30代、40代だけでなく50代、60代、あるいは70代の方もPCゲームを楽しんでいます。そして男性や女性の垣根もありません。ゲーミングPCはニッチではなく、先行きは明るいのです。