10月11日に発表されたドンキホーテホールディングス(ドンキHD)によるユニー完全子会社化。結果、ドンキHDの売上高は約1兆6000億円となり、小売業界でイオン、セブン&アイ・ホールディングス、ファーストリテイリングに次ぐ4位に浮上する。昨年11月にユニー・ファミリーマートホールディングス(ユニファミマHD)がユニーの株式40%をドンキHDに譲渡してから1年。完全子会社化の背景にはどのような事情があったのか。ドンキHDの大原孝治社長がその真相を明かした。
取材・文/大蔵 大輔
写真/中田 浩資
完全子会社化ありきの資本・業務提携ではなかった
誤解されている方もいらっしゃるようですが、完全子会社化ありきで資本・業務提携したという事実はありません。協業を進めていくなかで検討を重ね、、40%ではなく100%の株式を保有することが全方向にハッピーな結果をもたらすという合意に至りました。
誤解は2016年にファミリーマートとユニーグループ・ホールディングス(ユニーHD)が合併したときからあるようです。この統合劇で「ファミリマートは、ユニーはお荷物だったが、サークルKサンクスがほしくて合併した」という論調をよく見かけます。しかし、あれだけの規模のM&Aをするのに、ユニーの成長に本気で取り組まないなんてことはありえない。その当時はドンキの「ド」の字もなかったわけですから、ユニーは売却してサークルKサンクスをファミリーマートに転換するというプランは想定していなかったはずです。
ところが、新たな改善に挑戦していくなかで、業態の違いもあり、GMS(総合スーパー)業態に関しては試行錯誤する状態が続いた。そこでドンキHD側から「両社のノウハウをうまく活かせれば、ユニーを成長させることができるかもしれない」と申し入れた。ドンキHDは同じGMS業態の長崎屋を再生した経験もありますから。これが昨年5月のことです。
協議の結果、最終的にユニーの株式をドンキHD が40%取得することでまとまった。40%ならユニファミマHDは、自分たちで成長させる道とドンキHDにまかせる道の二つの選択肢を残すことができる。試験的な意味合いの強い40%だったわけです。
この段階では完全子会社化も含めて、まだ何も見通していません。40:60の資本関係で新しいGMS業態を模索するという未開の地を切り開いていきましょう、というのが両社で考えていたことのすべてです。
業態転換店舗では売上で前年比190%という成果をあげ、ドンキのオペレーション力がGMS業態でいかに有効かということを証明することができました。こうした実績をもって、ユニファミマHDと資本のスキームについての話し合いが行われ、ドンキHDがユニー株を100%保有する、ユニファミマHDがドンキHD株を20%保有するという現在の形に至りました。ドンキHDとユニーはGMS業態の成長を加速できる、ファミリーマートは持分法が適用されるので入ってくる利益は変わらない、ファミリーマートの親会社である伊藤忠商事は債務を圧縮できる。まさに全方向がハッピーな“ミラクルスキーム”です。
20%の株式譲渡は他の株主にとっても最良の選択
われわれの株主の目線に立てば、これは最良の選択です。創業家関連がこれまで通り28%、ファミリーマートが20%を保有すれば、安定株主で48%を占めることになります。伊藤忠商事の傘下に、という言われ方もしていますが、20%は議決権も拒否権もありません。そもそもGMSやディスカウントストアの業態をハンドリングのしようとは思わないでしょう。好意的なTOB(株式公開買い付け)であることは断言できます。
ユニファミマHDの高柳浩二社長も断腸の思いだったはずです。一方でドンキHD株を20%保有させてほしいという要望がきました。ファミリーマートとしてはユニーとの関係も間接的に繋がり続けることになりますし、われわれはステークホルダーにもメリットがあると判断し、この要望を受け入れました。
大きな夢はたくさんあります。リテールテックやビッグデータ、それぞれのノウハウを融合した業態開発など、さまざまな取り組みが考えられます。お互いの経営者同士が話し合う場を持てるようになったのが資本関係を結んだメリットですから、これから多様なテーマで協議していくことになると思います。まだどの方向に舵を切れば国際的な競争力を持てるようになるのかの答えは出ていませんが、日本国内に世界で勝負できる流通グループを形成するという志に対して、まずは最初の一歩を踏み出せたかなとは思っています。