ふと隣席の若いサラリーマン二人組が、
げらげらウケながらジョッキを”まわし食い”している異様な景色に気づいた。
一体、あれはなんだ?と連れと話していると、
「一口どうすっか」とジョッキがまわってきた。
ためらいなく手をのばす。さっきから、威勢のいい大バコのムードにのまれ
運命共同体みたいなへんな酔い方におちいっている。
そして、その正体は醤油味のインスタントラーメンだった…。
「社長のひらめきで生まれた名物」だそうだ。
その名も「ジョッキ ラーメン」。
まんまである。
かやく的なものがジョッキの中にゆらゆらと舞っている。
社長はなんのために、ラーメンをジョッキにイン…したか。

これまたジャンクなガラナハイ(200円)を痛飲しながら隣客と雑談する。



勢いで、「ホッピー中10杯500円」を追加注文しようとすると、
「一杯ずつでも同じ値段ですから(あわてないで)」とたしなめられた。
トイレに入ると、これまた張り紙がびっちり。
人生訓でもない、店の宣伝でもない。
時刻表と、最終電車の時刻を大きく書いた文字。
終電に乗り遅れないで~!という愛のメッセージであった。
そして最後。
一人客だろうと、二人客だろうと、老人カップルだろうと必ず店の外までお見送りされる。
何軒かはしご酒したあとに、また吸い寄せられるように「づめかん」に戻ると、
一斉に「お帰りなさい~!」と迎えられた。
こういう客、結構いるらしい…。


<今宵のお会計>
ホッピーセット 300円
中おかわり×2 100円
ガラナハイ 200円
チューハイ 150円
梅干しハイ 200円
筑前煮 100円
かぼちゃ 100円
やきとん×3本 300円
ピーマン 100円
二人で合計1550円


【店舗情報】
 
門前仲町「づめかん 門前仲町店」
住所:東京都江東区富岡1-13-14
営業時間:15時~23時45分
無休

 

 

 

 

文筆業。大阪府出身。日本大学芸術学部卒。趣味は町歩きと横丁さんぽ、全国の妖怪めぐり。著書に、エッセイ集「にんげんラブラブ交差点」、「愛される酔っぱらいになるための99の方法〜読みキャベ」(交通新聞社)、「東京★千円で酔える店」(メディアファクトリー)など。「散歩の達人」、「旅の手帖」、「東京人」で執筆。共同通信社連載「つぶやき酒場deep」を連載。