「第69回NHK紅白歌合戦」のジャパンカルチャー特集に出演することが決まり、広く話題となっている刀剣男士たちによる大規模ライブイベント「真剣乱舞祭2018」が、12月16日に大千秋楽を迎えた。この公演は、刀剣が戦士の姿となった“刀剣男士”を収集・育成する大人気PCブラウザ・スマホアプリゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」を原案としたミュージカル『刀剣乱舞』に出演した刀剣男士たちが一堂に会し、歌と踊りで見せるイベント。今回の公演には、三日月宗近(黒羽麻璃央)、小狐丸(北園涼)、石切丸(崎山つばさ)ら、18振りが登場した。圧倒的な熱量で観客を魅了した公演をリポートする。
11月28日、アリーナ中央に設置された花道の先の大きなステージ、和を感じさせるセット、そしてBGMとして流れる祭りばやしと、会場に入った瞬間から胸を躍らせてくれる日本武道館公演。会場アナウンスでは、移動手段としての馬を持ち込まないよう注意が言い渡されるなど、刀剣男士の世界に入り込んだ気分を味わえる細やかな演出が憎い。
開演時間オンタイム、観客たちの熱い思いが高まった武道館のステージに巴形薙刀(丘山晴己)が登場する。荘厳で悲哀を漂わせた音楽に合わせ、静かに、それでいて力強く舞う「弔いの舞」から、ステージはスタートした。
そこに、堀川国広(阪本奨悟)が現れ、巴形薙刀は「弔い方を知らない」と苦悩を吐露する。その答えは出ぬまま、そこに陸奥守吉行(田村心)、そして和泉守兼定(有澤樟太郎)が加わり、「どの祭りが日本一か?」という話題に。さらに、刀剣男士たちがそれぞれにお薦めの祭りを紹介していき、祭り談義に発展。そこで、三日月宗近の提案により、東国と西国どちらの祭りが盛り上がるかで対決することになった。東国にも西国にもルーツをもたない巴形薙刀が行事を行う。
こうして始まった祭り対決は、刀剣男士全員による新曲の歌唱からスタート。巴形薙刀によるしっとりとした歌から始まり、お祭り衣装に着替えた刀剣男士たちが登場すると曲調は一気に祭りモードに。西軍は三日月宗近、小狐丸、石切丸、岩融(佐伯大地)、今剣(大平峻也)、蜂須賀虎徹(高橋健介)、にっかり青江(荒木宏文)、陸奥守吉行、東軍は大和守安定(鳥越裕貴)、和泉守兼定、堀川国広、長曽袮虎徹(伊万里有)、蜻蛉切(spi)、千子村正(太田基裕)、物吉貞宗(横田龍儀)、髭切(三浦宏規)、膝丸(高野洸)に分かれ、各地の祭りを再現していく。
「祇園祭」「ねぶた祭り」「阿波踊り」「雪祭り」「よさこい祭り」「YOSAKOIソーラン祭り」と伝統の歌と踊りをアレンジしたナンバーで、会場を大いに沸かせた。
祭りナンバーを終えても、勝敗について結論を出せない巴形薙刀。「少し時間をください」と刀剣男士に伝え、そこから自身の出自についても考えを及ばせる。今回、芝居パートでは、一貫して、この巴形薙刀の自身のルーツへの苦悩と、それゆえに感じている不完全さがテーマとして扱われていた。巴形薙刀は、物語のない巴形の集まりだ。自身が何者であり、どう生きるべきなのか。歌って踊る華やかなステージの中にも、「刀ミュ」が一貫して描いてきた普遍的なテーマが息づいている。
ステージは続いて、ライブパートに突入する。圧巻の歌声と、完璧なダンスで魅せる髭切・膝丸は「Just Time」を披露。そのパフォーマンス力の高さに、2019年に公演が決定している「双騎出陣」に、いやが応でも期待が高まる。
印象的だったのは、小狐丸と三日月宗近による「Time line」だ。ステージに上がった小狐丸は「ご心配をおかけしました。おかげさまで、さらに大きくなって小狐丸、戻って来ました」と詫びた。「阿津賀志山異聞2018 巴里」に出演できなかったことへの複雑な思いが垣間見え、思いの込もった歌に胸を動かされた。
さらには、18振りの刀剣男士たちが入り乱れ、「Don’t worry,don’t worry」「Gateway」「mistake」とメドレーで歌唱。その後には、にっかり青江と千子村正による、大人なムード漂う「解けない魔法」のアレンジバージョンまで披露された。「解けない魔法」といえば、加州清光の楽曲だ。この公演には加州清光は出演していないからこその演出だが、新鮮さを伴って披露されたことに驚いた。
そして、武道館の会場替わり曲は、小狐丸による「Versus」。テンポのいい楽曲に会場のボルテージも上がり、会場は黄色のペンライトに染まった。
ここで、特筆しておきたいのが、武蔵坊弁慶(田中しげ美)、源義経(荒木健太朗)、源頼朝(冨田昌則)、榎本武楊(藤田玲)ら、歴史上の人物のキャストたちによる歌唱と和太鼓のパフォーマンスだ。本公演でも物語のキーを握る人物として、重要な役どころを担うキャストたちだが、この公演においても、絶妙なスパイスとなり、観客たちを盛り上げた。本公演でも印象深かった「To the North」、そして「白刃の月」はさすがの一言だった。
この日は、5曲の新曲を含む、全34曲が歌われ、会場を終始熱狂させた。次の出陣は大みそか。彼らが夢見たステージでの最高のパフォーマンスを楽しみに待ちたい。
(取材・文/嶋田真己)
ミュージカル『刀剣乱舞』公式サイト https://musical-toukenranbu.jp
ミュージカル『刀剣乱舞』公式Twitter @musical_touken