30歳を前に、仕事もオシャレもダイエットもセックスもやめちゃった!

次にご紹介したいのは、日本の女性向け官能小説の盛り上がりの先陣を切ったとも言える、選考委員も読者ターゲットもすべて女性と言う文学賞「女による女のためのR-18文学賞」の大賞・読者賞をダブル受賞した吉川トリコさんの『しゃぼん』(集英社文庫)です。

こちらの本は、とびきりリアルでキュートな女子たちが出てくる短編集なのですが、特に印象に残っているお話は、表題作である「しゃぼん」でした。

「しゃぼん」は、30歳を目前に、とある事情により、おしゃれもダイエットもセックスも仕事もやめて、ピザ屋でバイトをする恋人の「ハルオ」と一緒に暮らしている「花」が主人公です。

花はニートですが、家事もしないし、お風呂もたまにしか入らず、匂いをハルオに注意されるような暮らしをしています。それどころか、鼻血を出しながら生理にもなってしまい、服を汚して「上から下から血ぃ出して」とあきれられることも。

花は「頑張っても、いつか若さは失われるのだから、それなら今からもっと醜くなればいい」と思い、どんどん太り、醜くなっていきます。
30歳を前に、恋人との関係や、家族や友人の変化、少しずつ若さが失われていく外見を、とても恐れている花……。

確かに、30前になると一気に周りの環境や自分の身体が変化し始め、心がついていかない……なんてことはよくありますが、そんな花を甘やかし、優しく見守るハルオ!もはや神の域です(笑)。

過激な性描写は出てきませんが、長年一緒にいる二人の間に流れる密な空気感や、テンポの良い会話のやり取りが、とても面白く気持ちが良いです。

「誰になんて言われようと、一生女の子でいたい。恋人にもかわいがられたい。年齢にあらがうのは大変だけど、私の中にまだ“女の子”は残っているので!それ、捨てたくないので!!」と思う女性、必見です。

大好きな人と、素敵に歳を重ねていく方法が、見つかるかもしれません。