若い盗人二人の活躍を描くオノ・ナツメ氏の漫画をドラマ化したWOWOWの連続ドラマW「ふたがしら」が13日から全5話で放送され、豪放磊落(らいらく)な弁蔵役を松山ケンイチが演じる。沈着冷静な相棒の宗次(早乙女太一)と共に江戸から大坂への旅に出た弁蔵が、新たな盗人一味を構えるために奮闘する姿が描かれる。期待の新鋭、入江悠監督が描く“新感覚時代劇”について松山が熱く語る。
-弁蔵という役をどのようにして作り上げていったのでしょうか。
情熱はあるけど右も左も分からない若造が、人の生き死にを目の当たりにして成長していくという感じです。弁蔵は盗賊ですが、「脅さず、殺さず、汚え金を根こそぎ頂く」を信条にしています。でも裏稼業はそんなにきれいにはいかず、危険をはらんだものだという雰囲気が、弁蔵にも宗次にも見えた方がいいんじゃないかなと思いました。
-彼らの成長をどう見せていこうと考えましたか。
弁蔵は、最初は浮き足立ってやんちゃな感じですが、それがどんどん自覚を持って変わっていきます。そして最後は頭(かしら)としてどっしりとしていないといけない。そこに向かってどうアプローチできるかを考えました。
-大河ドラマ「平清盛」では武家のリーダー役を演じましたが、弁蔵はどんなタイプのリーダーですか。
弁蔵の考え方では「人生を楽しもう」というのが大前提にある。一味にいても面白くないから出て行くわけです。僕も面白いかどうかという尺度がその人の本当の物差しになるような気がするので、弁蔵はかっこいいと思います。僕にも太一くんにも家族がいるし、背負っているものがある。そういう立場が結果的に二人の演技にいい作用をもたらしたと思います。
-このドラマのどんなところが新しい時代劇だと感じていますか。
まあ、泥棒が主役というのはなかなかないし、人間的な成長を経て新しい盗賊集団を作るという話もとても新鮮です。侍もほとんど出てきません。撮影では、東映の時代劇の様式美は取り入れつつも、照明も変えているし、初めて時代劇を撮る入江さんが東映太秦撮影所のスタッフの方たちをいい意味でかき回している感じがしました。
-演出家としての入江監督をどう見ましたか。
役者の意見を取り入れて自由にやらせてくれます。多分、自分の中に役者を自由に動かすことができる幅を持っているのでしょう。
-大河から時間がたって、いま役者としてのスタンスは?
この作品は自分で「これをやりたいんです」と言ったところから始まっています。大河の後、自分が何を表現したいのかということに向き合うことができるようになってきました。このドラマの後、弁蔵と宗次がどうなるのかにも興味があるし、演じてみたいので、続編を希望しています。そのためにはいい演技をしなければいけないし、それこそが自分の責任だと思います。