圧巻の演技力を見せるメインキャストたち

それぞれのキャストにも触れていきましょう。

主役のサクラ姫を演じる石田亜佑美さんの可憐さは特筆モノでした。次期女王という大きな運命を背負いながらも、ひとりの人間、ひとりの女性として自然にしなやかに生きているサクラ姫を、これ以上ないというほどの愛くるしさで演じてくれます。

男女問わず、サクラ姫の魅力にノックダウンされた方も多いのでは?キャラクターの魅力もさることながら、ご本人の力量あってこそでしょう。

そのサクラ姫を挟んで向かい合うふたりの男性、アサダとキリを演じるのは工藤遥さんと鞘師里保さん。特に「リリウム」を御覧になった方は、このふたりの対面にはゾクゾクしたのでは? 少年役を演じたら天下一品の工藤さん、今回もいい意味で男の子にしか見えません。

城を照らすためにスワスワを操る後ろ姿に、なんとも言えない哀愁がありました。そして、本公演の女性人気を独り占めしたであろう凛々しいキリ中尉! 美少女鞘師さんがキリ中尉を演じると、本当に長髪の男性に見えるから不思議です。

そうそう、激しい感情を秘めながら、それを表に出すことが出来ない侍女、ローズウッドを演じた小田さくらさんには目を見張りました。「リリウム」でもシルベチカという物語のキーパーソンを演じましたが、今回も非常に重要な役どころを情感たっぷりに演じてくれるんです。

ココロが千々に乱れ、それでも小田さんの演技力があればこそ、ローズウッドの苦悩が表現できたのだと思います。うむむ、もっと小田さんの演技が見てみたい…。

脇を固める才能豊かな面々にも拍手!

もちろん脇を固める面々も豪華! アルファ最強の女王、イオタを演じる譜久村聖は貫禄十二分。ミステリアスで美しい姿には見惚れてしまいます。

そして、須藤茉麻さん演じる王ゼータも印象深かったです。「WEEK END SURVIVOR」では美しき謎の女を演じた須藤さんが、今回は優しく少し頼りなく、それでいて威厳もある一国の王を演じ切っていました。

ストーリーの中でも安心感と頼りなさのバランスが素晴らしくて、登場人物の中でも最も現実味のある役柄だったかもしれません。改めて考えると、譜久村さんと須藤さんのカップルって至高すぎます…。

王宮と対照的に描かれる市場のシーンも楽しかったですね。うらやましがりの露天商ダイスを演じる佐藤優樹さんと、なぜかバリバリの関西弁なジョンベルを演じる尾形春水さんは姉弟という設定。

基本的にはおとなしくしっとりとして進む王族たちのストーリーの中で、慌ただしく騒がしい市場のシーンは良いアクセントになっていました。コメディタッチだけれど、リアルな庶民の本音が見え隠れするシーンなのもポイントでしょう。

個人的に楽しみにしていたのは、新聞少年ピンプ役を演じた高瀬くるみさん。小2からミュージカルを学び、数々のステージを経験してきた彼女は、新しい舞台の上でもイキイキと躍動していました。

ダンスのキレは以前よりも上がっているかも…というレベルの高さ。わき役ではありますが、動きと発声がしっかりしていないと成り立たない役柄を演じ切っていました。本当に厳しい環境だとは思いますが、このチャンスを生かしてさらに大きく成長してほしい! そうそう、スワスワ役も可愛かったですよ!