探偵の仕事に対する考え方がリアル

『探偵の探偵』には、フィクションで従来描かれていた探偵の幻想を粉々にする描写があちこちに見られます。名推理で殺人事件トリックを見破ったりする探偵イメージは「小説やTVドラマだけ」と身も蓋もない言い方をされています。まさにその通りです。

探偵の仕事はどこかしら必ず違法行為を含んでいる、というのもリアルです。浮気現場になっているマンションでの張り込みは不法侵入であり、調査の一環として対象者が出したゴミを持ち去るのも条例違反。そもそも素行調査自体がプライバシー権の侵害なわけですから‥‥。あくまで「正当な調査」を目的として、一定範囲の行為が黙認されているだけに過ぎません。

これが探偵同士の潰し合いだとさらに違法性を増します。作中では主人公の所属する探偵社に、悪徳探偵がニセの依頼者を送りこむシーンがありました。ニセの依頼者が相談に来たり、ニセの探偵希望者が採用面接を受けに来たりするケースは現実にもあります。そしてお互いに後ろ暗いことをしているのは知っていますから、多少の被害が出ても警察に届けたりできません。

こうしたシビアな、非合法がまかり通る現実を知った新米探偵(演:川口春奈さん)が「まるで暴力団みたいじゃないですか!」と言い放つシーンは、かなり真に迫っています。

女性調査員への考え方がリアル

『探偵の探偵』では、探偵社の上司が主人公に対して「君は人目をひくから探偵には向いていない」と話すシーンが出てきます。目立たない、平凡な外見こそ探偵にはベストというのは現実でも同じです。たしかに、白昼の住宅街で北川景子さんのような美女が張り込みしていたら、目立ちすぎますね‥‥。

ただし少し補足しておきますが、若い女性がすべての現場調査に不向きとは言えません。たとえば行方調査などで聞き込みをする時は、女性調査員からアプローチしたほうが相手の警戒心が解けて情報を引き出しやすくなります。また、現場によっては男性だけ、女性だけよりも「男女ペア」でいたほうが目立ちにくくなる場合もあります。週末の繁華街などはその典型で、不倫カップルを尾行するには探偵側もカップルを装ったほうが動きやすいわけです。

長時間の連続張り込みや尾行などで、体力に劣る女性が不利な職業なのは否めません。「別れさせ工作」業務の自主規制が進んだため、工作員としての需要も減少しました。それでも探偵業界に女性のニーズがないわけではないことは知っておくと良いでしょう。