アルバム『スキマスイッチ』がまとう“飾らなさ”の正体
最初にこのアルバムを聴いたとき、どこか不思議なアルバムだな、と思いました。これまでの熱量渦巻く感触とは違う、どこかさりげなさというか、風通しのよい手ざわりを感じたのです。
この感覚は、セルフタイトル作を出すと知ったとき反射的に抱いた「どんなに気合いの入った超大作になるのだろう」という勝手な想像からは若干外れたものでした。実際に聴いてみると、10曲というフルアルバムにしてはミニマムなボリュームで、なによりセルフタイトルにも関わらず過去最高に力の抜けた、飾らないアルバムに仕上がっていたからです。
アルバムに至る3枚のシングル『Ah Yeah!!』『パラボラヴァ』『星のうつわ』を聴けばわかりますが、スキマスイッチのソングライティングはここにきてさらに飛躍的に進化しています。今作でも1曲1曲の純度はすさまじく高まっています。
しかしそういった珠玉の楽曲たちが、仰々しい包装紙できれいに包まれているのではなく、実にさりげない顔をして、ただ目の前にゴロッと並べられているだけ――そんなアルバムなのです。
この、これまでにない“飾らなさ”はいったいなんなんだろう――そんな思いを抱きながら足を運んだツアーで、 スキマスイッチが身につけた“飾らなさの正体”をまざまざと見せつけられたのです。
日本武道館の1曲目は、ホールツアーと変わらず『Ah Yeah!!』からスタートしました。事前にアナウンスされていたとおり、この日のライブはホールツアーの内容を踏襲しつつ、さらにブラッシュアップした内容となっていました。
続いて全都道府県ツアー「DOUBLES ALL JAPAN」で生まれたアッパーチューン『トラベラーズ・ハイ』へと雪崩れこんだあとは、序盤の白眉である『夏のコスモナウト』~『双星プロローグ』のブロックへ。
この2曲、先の2曲に比べるとテンポが控えめなこともあり、セットリスト的にはいったんクールダウンという印象もなくはないですが、実はもっともスキマスイッチのライブにおける演奏のグルーヴを感じられる流れだと思います。
長いツアーを共にしてきた“チーム・スキマ”の面々も、ホールツアーのとき以上に演奏の自由度を増し、彼らが生み出す、高い武道館の屋根に向かって旋回しながら登っていくような豊かなグルーヴが、まだ4曲目とは思えない高揚感を会場に充たしてゆきます。