日出役の江口のりこ

 NHKの大河ドラマ「花燃ゆ」で、毛利家の奥御殿(大奥)の外交係である「表使(おもてづかい)」を務める謎の多い女、日出(ひので)を演じている江口のりこ。銀姫(田中麗奈)の信頼の下、頭角を現してきた主人公の美和(井上真央)を監視し、時にはさまざまな罠を仕掛けて揺さぶる。話題作への出演が相次ぐ江口が美和に対する日出の屈折した思いを語る。

 

-日出はどんな人物ですか。

 監督には「日出は現代のサラリーマン的な存在です」と言われました。「ただ真面目にやるべきことをやっている人なんだけど、美和が急に来て自分よりもすごいスピードで出世していく(ことに内心穏やかでない)」と。なるほどと思って“ザ悪人”みたいなのはやめようと思いました。

-そうした部分を視聴者にはどう分かってもらおうと考えていますか。

 いい人かもしれないし、今見せたいい顔はうそかもしれないと思ってもらえるような、よく分からない、本当の姿がつかめない感じがいいと思っています。美和は日出に殺されかけたのに、その後で「一緒に畑に種を植えましよ」なんて言ったりする(笑)。美和は大した人物で、それに日出は引っ張られているんです。

-井上真央さんの印象は?

 真央ちゃんは前世でもヒーローだったんじゃないかなと思っています(笑)。すごく頼もしいし、かっこいいですね。

-松坂慶子さんや田中麗奈さんはいかがですか。

 松坂さんは“ザ姫”で、その場にいる人たちみんなが柔らかくなるような感じです。麗奈さんは天然なところがあって、しっかりしているようでちょっとすっとんきょうなところがあります。

-幕末の時代には興味は?

 歴史には全く興味がありません。だから大河ドラマも自分が出るということになって初めて見ました。

-着物の着心地はいかがですか?

 苦しいですね(笑)。でもコツがありまして、着付けでひもを一つずつ縛るときに空気を思い切り吸って体を大きくしておくと、着た後(に余裕ができて)ちょっと楽なんです(笑)。でも油断して何もしないと、本当に体をがちがちに固められた感じになってしまいます。

-それはすぐに慣れたんですか。

 正直、今も苦しいです。

-この先、大奥での動きもたくさん出てきますね。

 長い着物を引きずって階段を降りる、回るというのがなかなかスムーズにできないのですが、芝居とは別に所作というところに楽しみを見付けました。

-幕末の時代にいたら、どの立場にいたいですか。

 私は台所でご飯を作っていたいです(笑)。そっとしておいてほしい。

-ぜひ見てほしいシーンはありますか。

 美和にうそをつくシーンです。「私も兄を亡くしているので、あなたの気持ちは分かりますよ」と話すシーンがあるのですが、演じながら「こんなに賢い美和がだまされるはずはない」と思ってしまい、その気持ちが本番中も拭い切れなかったんです。だからその場面が、画面では一体どう見えるのかなと私自身が楽しみにしています。

 

再放送でもぜひご覧ください。
第31回 8月8日 土曜日 NHK総合 午後1時05分~1時50分(再)