「『部屋 THE ROOM』(94)のときにカメラを貸したのがきっかけで仲よくなった園子温は、『俺は園子温だ!』(85)でPFFのグランプリを受賞して『自転車吐息』(90)で劇場監督デビューした。
でも、自分が作る映画はPFF向きじゃないと確信したから、僕はぴあとはまったく違うところから映画の世界を目指そうと思って。
中学生のころに公開された『狼男アメリカン』(81)、『遊星からの物体X』(82)がきっかけでブームになった特殊メイクにもハマっていたし、自分が作る映画には特殊メイクが必要だったから独学で勉強をしたんですけど、子温の映画でずっと特殊メイクをやっていた事もあって、08年に『東京残酷警察』で劇場監督デビューすることができたんです」
そこから一気に非凡なる才能を開花させた西村監督は、監督、特殊メイク&特殊造型などのアーティストとしてマルチに活躍。
いまでは日本映画界になくてはならない存在となり、この夏の超大作『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』にも樋口真嗣監督から直々に指名されて参加した。
そのポジションは、自らが命名した「特殊造型プロデューサー」。いったいどんな仕事なのか?
「“進撃”は前後篇からなる大作だし、あの世界観を創造するための造型物が膨大に必要になるから、ひとつの工房ではやりきれないんですよ。
これまでの特撮モノの大作でひとつの工房でやっていたように見えたものも、実はそこから他の工房に振り分けていたんですね。
そこで僕の出番というか、僕はいろいろな工房とのつき合いがあるし、どの工房の誰がどんな作業を得意としているのかを知っているから、仕事をその適材適所の人たちに半ば強引に振り分けていった。そうすることで、より効率よく、よりクオリティの高いものを作ることができたと思っています」
『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』では、スーツアクターやクリーチャー、ミニチュアを使った日本映画界伝統のアナログの特撮がまんまと成功。
映画を観た多くの人が、その重量級のスペクタクルに圧倒されたに違いない。
「別に実存主義ではないです(笑)。フルCGでもいいんです。いいものができるなら。でも、“進撃”の場合はそれなりの予算があったし、樋口監督や尾上特撮監督の狙いもあった。ミニチュアを作って、実写で撮ったものに後からCGを合成していった方が絶対にいいという結論に達して僕も賛同しました」