『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』©2015 映画「進撃の巨人」製作委員会 ©諫山創/講談社

それはなぜなのか? その理由にこそ、日本の特撮の現状と進むべき未来のヒントが隠されている。

「例えば、『ゴジラ』を日本はフルCGで作ることは難しいんですよ。

なぜなら、その環境が整ってないから。ゴジラをリアルなアニメーションで描こうと思っても経験値が少ない。

ハリウッドなら火炎放射を吐くときのゴジラの喉の震えなんかも、過去の作品をアレンジしたり、その経験で表現できるけれど、日本にはそういった積み重ねてきたものが少ないんです。

そこは、日本が誇る昔ながらの特撮が、長年受け継がれてきた着ぐるみや造型物、操演などの確かな技術によって成り立っているのと同じじゃないですかね」

だったら、フルCGで創造できる人材を育てればいいんじゃないか? そういう声も当然聞こえてくるが、そんなに簡単なことでもないらしい。

「日本には育てる環境と予算がないんです。

だから、CGの技術に関しては10年後も20年後も、ハリウッド映画に追いつくことは難しいでしょうね。でも、例えば特殊メイクに使用するシリコン素材なんかもネットで安価で買えるようになったから、すごくやりやすい。レベルも上がってきていますよね」

要はこれまで培ってきた技術をちゃんと利用してさらに磨きをかけた方が得策だし、世界と勝負するならそこを強化した方が早道ということなのだろう。

そして、その技術を最大限に発揮するには、いままでに誰も観たことのない圧倒的なシチュエーションを作り出す必要がある。

“ゆうばり”オフシアター・コンペティションの作品に対する冒頭の西村監督の言葉は、そこを期待しているからこそ、思わず出たものなのかもしれない。

「人を驚かすのが好きなんです」

西村監督が何気につぶやいたそのシンプルな言葉が、すべての物作りの源。

2016年夏公開予定の新『ゴジラ』では脚本・総監督の庵野秀明、監督・特技監督の樋口真嗣とタッグを組む異能が、これからも日本の特撮エンターテインメントをどんどん面白く進化させてくれるはずだ。

映画ライター。独自の輝きを放つ新進の女優と新しい才能を発見することに至福の喜びを感じている。キネマ旬報、日本映画magazine、T.東京ウォーカーなどで執筆。休みの日は温泉(特に秘湯)や銭湯、安くて美味しいレストラン、酒場を求めて旅に出ることが多い。店主やシェフと話すのも最近は楽しみ。