©2016「の・ようなもの のようなもの」製作委員会

10月22日にいよいよスタートする「第28回東京国際映画祭」。今回は、特にグローバルな視野を持った日本映画を発信しようという傾向がみられます。その中から、特に注目の作品を新旧問わずピックアップしてみました。

監督の個性が光る“コンペティション”部門

コンペティション「FOUJITA」

©2015「FOUJITA」製作委員会/ユーロワイド・フィルム・プロダクション

私自身、海外の映画祭に参加した際、海外の映画人の声を聞いて気づいたことがあります。それは、「日本映画は画一化したスタイルにとらわれすぎており、独自のスタイル、新たな表現への挑戦を忘れている」ということです。

コンペに登場する小栗康平監督は、日本映画界で独自のスタイルを貫いている貴重な存在です(しかし、この巨匠が10年かからないと新作が撮れなかったというのもまた、日本映画の低迷を示しているのかもしれません)。

小栗監督の特徴は、心象風景を静粛なタッチで綴っていくというもの。デビュー作「泥の河」は万人受けのする傑作ですが、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した「死の棘」以降、そのスタイルは純化していき、孤高の域に達しています。

一方、今回の題材に選ばれているのは、戦争に翻弄された日本を代表する洋画家・藤田嗣治。激動の時代とそのスタイルが、どのように混ざり合っているのか見ものです。

コンペティション「残穢【ざんえ】 -住んではいけない部屋-」

©2016「残穢-住んではいけない部屋-」製作委員会

溝口健二×田中絹代、小津安二郎×原節子、木下恵介×高峰秀子、市川崑×岸恵子、増村保造×若尾文子など、名作の多くは名コンビによって作られて来ました。そこで、現代における名コンビが存在するのかと考えた時に、まず思い浮かぶのが、中村義洋×竹内結子のコンビです。

今作は、小野不由美原作によるホラーミステリーとのこと。このコンビによるホラーは初めてですが、「リング」で注目された竹内結子と、初期に多くのホラー作品を手掛けてきた中村監督だけに、期待度は高まります。

コンペティション「さようなら」

©2015 「さようなら」製作委員会

近年、ミニシアターでは多くのインディペンデント作品が公開されています。そのなかで出色といえたのが深田晃司監督の「歓待」でした。独特のタッチで描かれる人間模様は、スリリングの一言(劇団青年団出身であったことから、計算され尽くしたものであることが伺えます)。

新作は、なんと近未来の日本を舞台にしたアンドロイド演劇を映画化したもの。かなり異色なのでしょうが、若手では唯一コンペに選出されていることからも、完成度の高さは絶対でしょう!