35年を経て蘇る名作に
今が旬の原田眞人監督作も
パノラマ「ジョーのあした-辰吉丈一郎との20年-」
赤井英和の生きざまそのものをダイナミックに描写した劇映画「どついたるねん」でデビューした阪本順治監督が、自身の代名詞でもあったボクシング映画が遠ざかって20年。なぜ撮らなかったのか?…答えはここにありました。1995年、「BOXER JOE」で辰吉丈一郎の迫った阪本監督は、じつはその後もカメラを回し続けていたのです。
ボクサーとして現役であり続ける男と、プロテストを受けるまでに成長した息子。ドキュメンタリーが、一つのドラマとして結実するには、これだけの時間を要するのだと思うと、気が遠くなってしまいます。
パノラマ「の・ようなもの のようなもの」
故・森田芳光監督の代表作が「の・ようなもの」であると信じて疑わない者にとっては、この作品は観ていいものか? 正直迷ってしまいました。実際、松山ケンイチと北川景子だけでは、たしかに森田作品と縁が深いといっても足踏みしていたであろうと思うのです。
そこで、最大の後押しとなるのが、伊藤克信の存在です。ヘタウマという言葉がぴったりの演技にもかかわらず、なぜかいつまでも印象に残る俳優で、「の・ようなもの」ばかりではなく、当時「キャバレー日記」(根岸吉太郎監督)でも主人公を演じています。この伊藤克信演じる志ん魚が重要な位置を占めているということで、今作は森田作品で育った映画ファンには必見の作品といえるのではないでしょうか?
Japan Now「KAMIKAZE TAXY」
俳優演技、そして映像演出という面で、現在に繋がる大きな日本映画の流れを作った原田眞人監督。今回、その特集として5本の作品が上映されますが、スクリーンでもっとも観てほしいのがこの作品です。
命を狙われながらも復讐を企てるチンピラと、日系ペルー人タクシードライバー。タクシーを走らせながら芽生えていく男たちの友情。ラフなカメラワークと、アンデス調のBGM、そしてブレイク寸前の位置にいた役所広司のキレッキレの演技に目が釘付けになること間違いなし。長時間の作品ですが、飽きる暇など、一切ありません!
Japan Now「恋人たち」
「渚のシンドバッド」「ハッシュ!」「ぐるりのこと。」と、佳作ながら記憶に残る人間ドラマを描き続ける橋口亮輔監督7年ぶりの長編。
今回は、通り魔に妻を殺された男、平凡な主婦、そして同性愛者の弁護士という3人の思いを描いていきます。3人を演じるのは、いずれもオーディションで選ばれた新鋭たち。周知の俳優が演じないからこそ、現在の日本の実情がリアルに描写されるのではないかと、期待を膨らませています。