シェークスピア作品といえば、難しそう…という先入観を持たれがちだが、演出やキャストによっていくらでも形を変えていくのが演劇の面白いところ。また脚本家が影響を受けた作品を知っていると、一層楽しさが増す場合もある。以下の3作はそんな視点から楽しみたい作品だ。
世界中で何度となく上演されてきたシェークスピアの4大悲劇の一つ「ハムレット」が、英国演劇界の第一線を走る注目の演出家の手によってダークファンタジーな「ハムレット」として、5月9日~6月2日、都内・Bunkamura シアターコクーンで上演される。父の死と早過ぎる再婚により、憂いに沈むハムレットの前に現れた亡霊が「私はクローディアスに毒殺された」と告げる。復讐(ふくしゅう)を誓ったハムレットは、周囲の目を欺くために狂気を装って…。出演は岡田将生、黒木華、青柳翔、村上虹郎ほか。
ウディ・アレン監督の映画『カイロの紫のバラ』にインスパイアされ、1930年代の日本の架空の港町を舞台に置き換えて作られた物語が「世田谷パブリックシアター+KERA・MAP #009『キネマと恋人』」(6月8日~23日)。2016年に初演され、高い評価を得た本作が待望の再演となった。世界恐慌のあおりを受けていた激動の時代でありながら、大正ロマンの名残と昭和モダンが花開いた頃、ある女性が銀幕の俳優に淡い恋心を抱いたことから起きる騒動が描かれる。ファンタジックでありながらどこかビターな味わいが胸に残る本作を、妻夫木聡、緒川たまき、ともさかりえ他がつむぎ上げる。
「ハムレット」からは一転、シェークスピアのいたずら心が満載の恋愛喜劇が「お気に召すまま」(7月30日~8月18日 東京芸術劇場 プレイハウス ※地方公演あり)。アーデンの森を舞台に、性差を越えて燃え上がるさまざまな恋模様を、幾つもの名ぜりふで描く。満島ひかり、坂口健太郎、満島真之介、温水洋一、中村蒼、中嶋朋子ら、演出家・熊林弘高の信頼も厚い役者が集結する。(小村咲希)