ワールド・フォーカス
東京国際映画祭のラインアップが発表されたら、「今年は何を観ようか?」と筆者が真っ先にチェックするのがワールド・フォーカス部門だ。
ここでは国際映画祭の常連監督の最新作や、すでに海外で受賞するなど高い評価を得た作品が上映される。
要するに“折り紙付き”の秀作が揃う部門なのだ。
今年もホセ・ルイス・ゲリン監督の『ミューズ・アカデミー』、マルコ・ベロッキオ監督の『私の血に流れる血』、ホン・サンス監督の『今は正しくあの時は間違い』などにシネフィルの注目が集まるに違いない。
140分本編ワンカット撮影!『ヴィクトリア』
上記の他にぜひとも観てみたいのは、ドイツ映画『ヴィクトリア』(セバスティアン・シッパー監督)だ。
ある早朝、ベルリンのカフェで働くスペイン人少女が見知らぬ若者たちに声をかけられたことをきっかけに、銀行襲撃事件に巻き込まれていくという物語なのだが、この映画の最大の特徴は140分の本編がぶっ通しのワンカットで撮られていること。
最近ではアカデミー賞4部門を制した『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でも採用された手法だが、本作はクライム・サスペンスというジャンルと結びつき、ただならぬ臨場感の映画体験を予感させる。
観たことのないシュールなサスペンス&アクションを堪能『シュナイダーVS.バックス』
謎の集団“ボーグマン”がある裕福な家庭を浸食していく様を、摩訶不思議なまでに美しくも不気味な映像感覚で描き上げた『ボーグマン』のアレックス・ファン・ヴァーメルダム監督の新作『シュナイダーVS.バックス』も見逃せない。
題名の“シュナイダー”は殺し屋、“バックス”はその標的となる作家の名前なのだが、バックスが暮らす一軒家を取り囲む広大な湿地帯の空間が、どのような映画的な面白さに転化されているかが見どころ。
不条理系のスリラーやコメディで名を馳せてきた鬼才ヴァーメルダムならば、きっと観たことのないシュールなサスペンス&アクションを堪能させてくれるはずだ。