コメディや恋愛映画のおすすめはこの3本
コンペ作品となるとお堅い映画をついつい想像してしまうが、今年のTIFFのコンペはとにかくバラエティ豊か。コメディや恋愛映画も並ぶ。
「イタリアから届いた『神様の思し召し』は、本国では大反響をよんだコメディです。
息子のある告白から人生に狂いの生じたエリートの外科医の物語なのですがとにかく笑いが満載。でも、後半にはきちんと感動も用意されていて、王道の悲喜劇といっていいです。
恋愛ドラマが好きな人におすすめなのは『スナップ』。
同級生の結婚式で故郷を訪れたヒロインが、かつて思いを寄せた相手に再会を果たす。その心模様がスタイリッシュな美しい映像で描かれます。
誰もが通ったであろう初恋の初々しい記憶とほろ苦さがよみがえる作品ですね。
『ぼくの桃色の夢』は東京フィルメックスで『独身男』などが上映されていて日本の映画ファンにもおなじみの中国の異才、ハオ・ジエ監督の最新作。
こちらは少年の性の目覚めが描かれている。これもまた誰にも身に覚えがあるのではないでしょうか?
実は監督から邦題に“桃色”という言葉を入れてくれというリクエストがきたのですが、まさしくその“桃色”がキーポイントです」
日本映画はいま世界に届けたい巨匠・ヒットメイカー・新鋭が揃い踏み
これらの海外勢に対し、日本映画は今回3作品が選出。日本映画界の各世代のキーマンといえる監督がそろい踏みとなった。
「昨年が1本だったのでその反動ですか?とか言われたりもするのですが、そんなことはなくて。ただ、漠然となのですが、日本映画に関してはこんな想いがありました。“今の日本映画の多様性をどうにかして世界にアピールできないか”と。
その中で、巨匠、ヒットメイカー、期待の若手といったキーワードがなんとなく浮かび、そういった形でセレクションできればいいなとの思いが芽生えてきて。すると、ぴたりと当てはまる海外作品とひけをとらないすばらしい作品が出てきてくれました。
それが、巨匠、小栗康平監督の『FOUJITA』と、現代のヒットメイカーである中村義洋監督の『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』、そして今最も期待される若手映画作家である深田晃司監督の『さようなら』です。
今の日本映画の多様性を世界に発信できる3本と思っています」
小栗康平監督の『FOUJITA』は、画家・藤田嗣治の半生を描く人間ドラマ。海外からも高い評価を受ける小栗監督にとって約10年ぶり、待望の新作となる。
一方、『予告犯』『奇跡のりんご』など話題作を次々と手がける中村義洋監督の『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』は、小野不由美の傑作と名高い小説の映画化。
タイトル通り、いわくつきの部屋を舞台に、戦慄のミステリードラマが展開する。
また、『ほとりの朔子』に続く深田晃司監督の『さようなら』は平田オリザのアンドロイド演劇の映画化。放射能で汚染された日本を背景に、人間の生と死が描かれる。いずれの作品も劇場公開に先駆けての上映。今年の年末シーズンの要注目作にひと足早く出会えるチャンスだ。