ヨーロッパのサンタは超怖い
ヨーロッパ各地では私たちが知る“アレンジされたサンタクロース”とは別に、モデルになった当人がプレゼントを配りに来るイベントがあるそうだ。その名は「聖ニコラウス祭」。彼の命日である12月6日に行なわれる。
聖ニコラウスは一人ではなく、お供をぞろそろ連れてやってくる。“黒いサンタクロース”こと「従者ループレヒト」、あるいは「クランプス」「ルシフェル」「ヴォーダン」といった怪物や神様まで……いずれも恐ろしい姿をしていて、普通の子供なら見た瞬間に泣き出しかねない。
聖ニコラウスは子供がいる家を訪ねてまわり、良い子にはクルミやクッキーなどのプレゼントを与える。悪い子がいればお供の怪物がムチで脅したり、肩にかついだ袋に入れて連れ去ろうとしたりする(フリをする)らしい。袋に入れられた悪い子は、森に連れて行かれる、極寒の川へ投げ込まれるなど諸説ある。なんとも殺気に満ちたサンタさんだ。
地域によってはこのバケモノ従者たちが逃げる子供を執拗に追いかけ回し、大人や老人にまで襲いかかることもあるようだ。現地を取材した作家の高橋大輔氏は、この時の様子を「阿鼻叫喚」「会場は地獄絵さながらだ」と書き記している。
ちなみにヨーロッパには、怖いサンタクロース的な存在が他にもいる。フランスの「アリーおばさん」は鉄の歯とガチョウの足をもった女性サンタ。良い子にプレゼント、悪い子にムチを贈るのは聖ニコラウスと似ている。イタリアの「ベファーナ」は魔女の格好で空を飛び、悪い子のおしりをホウキで叩くこともあるという。
やさしいサンタさんだけが来てくれる日本に生まれて良かった……。
おそろしいサンタが出てくるエンタメ作品
“やさしいはずのサンタが実は怖かった”というモチーフは人の心を引きつけるのか、海外の映画には『サタンクロース』『悪魔のサンタクロース』など、サンタクロース姿の殺人鬼を描いた作品がいくつかある。
特に、サンタの地元(?)フィンランドで製作された『レア・エクスポーツ 囚われのサンタクロース』は、地下から発掘されたサンタクロースが村人を惨殺するというトンデモ設定。なにげに脚本がよく練られていて面白く、オススメだ。
日本のエンタメ作品にもしばしば黒いサンタクロースや、普通の衣装だが好戦的なサンタクロースが出てくる。たとえばアニメ化もされた漫画『大魔法峠』(作:大和田秀樹)には超マッチョなサンタクロースが登場。プレゼントをもらいに訪ねていった主人公と激しい格闘バトルを繰り広げている。
世間がうきうきしたムードに包まれるクリスマスシーズン。たまにはこういう殺伐としたサンタクロースに触れてみるのもいいかもしれない。
<参考文献>
『よくわかるクリスマス』渡部雄一郎・嶺重淑(編)/教文館
『誰も知らないクリスマス』舟田詠子/朝日新聞社
『12月25日の怪物』高橋大輔/草思社
『サンタクロースの秘密』稲垣美晴/講談社
『サンタクロースの大旅行』葛野浩昭/岩波書店
『サンタクロースのおもちゃ箱』豊田菜穂子・伊藤正道/WAVE出版