家庭の中で感じる「疎外感」
ですが、妻の思惑通りにいかないのは、夫の一方的な決定にあります。
「何も言っていないのに、
『今度の週末もどうせいないんだろ?子どもたちを連れて実家に帰るから』
って勝手に決めるんですよね。
先に言われても彼氏と約束できないこともあるし、そうなったら私は一人だし、まず確認してほしいって言うんですけど……」
それでも夫は休日の朝早くから子どもたちと家を出ていき、テーマパークのお土産を抱えて帰宅します。
「おばあちゃんが買ってくれた!」「ジェットコースター楽しかった!」と口々に報告してくれる子どもたちを見ると、
「疎外感がありますよね。
この子たちの母親は私なのに、夫の家族だけで遊びに行って、私は蚊帳の外。
この間はみんなで映画を観に行ったとかで、ご飯を作って待っていたけど連絡もしてくれないし。
確かに嘘をついて出ていく私も悪いですけど……」
苦々しい顔でつぶやく妻ですが、その現実は自分で引き寄せたものです。
休みの日まで家族を置いて出ていくなら、夫が実家を頼ることにも文句は言えません。
自分抜きで楽しんできた報告、夫としかわからない会話で盛り上がる様子に疎外感を覚えても、それは誰でもない自分のせいなのです。
これが、仮面夫婦を選んで不倫を楽しむ妻が手に入れた本当のリアルでした。
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どうにもならずに身動きができない夫婦と違い、あえて仮面夫婦状態を選ぶ夫と妻には、それを良しとする理由があります。
それが利己的なものであればあるほど、夫婦間の溝が深まるだけでなく家族間の絆まで分断されるような危機も、決して遠いことではありません。
この妻がいざ家族の輪に入ろうとしたとき、どんな痛みを受け止めなければならないか、すべて自分が招いた結果といえます。